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「著者を応援する」 ブレない目的から、組織と働き方が作られる――英治出版

J-WAVE(81.3FM)の人気モーニングワイド「J-WAVE TOKYO MORNING RADIO」内で、様々な企業が取り組んでいる「働き方」から、これからの変化や未来を考える「RECRUIT THE WORK SHIFT」。1日のスタートに「新しい働き方」のヒントをシェアしています。

7月6日~7月9日の放送では、出版業界で独自の存在感を発揮する「英治出版」の“ロングヒットを生み出す組織と働き方”をご紹介しました。

年々縮小する出版業界。その渦中にありながら、順調に売上を伸ばし、数々のロングセラーやベストセラーを出版している出版会社、英治出版。

代表の原田英治さんは大手コンサルティング会社出身。1999年に英治出版を立ち上げました。編集経験も出版業界にいたこともなかった原田さんが目指したのは、通常と少し違う出版社でした。それは“著者を応援する出版社”。

設立当初の無名な出版社が著者に約束したのは、“絶版にしない”ということでした。時には出版社の利益を最優先させない、そのような姿勢は著者との信頼関係を生み出しました。

作品への共感を形にし、世の中に広げるため、「ブックファンド」という仕組みも提案。ここからも数々のロングセラーが生まれています。

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そんな英治出版の社員には、「編集者」や「営業」といった肩書きを持たず、書籍に携わる社員はすべて「プロデューサー」だとか。その心を原田さんに伺うと、「著者の想いを公(パブリック)にするために応援するパブリッシャーが自分たちの役割だと思っています。既存の編集、営業といった役割分担は本を“売るため”には機能的だけど、著者を応援するという観点だとプロデューサーとして企画から販売まで一貫して携わった方がいいと思い、このスタイルにしています」と語ってくれました。

社員の皆さんは「ひとり出版社」ができるようになるほど、営業や編集などあらゆる業務を習得することを目指して働いているそうです。

 自分たちの仕事の最終的な目標は何なのかを見つめ直す――。そこが定まれば、組織のカタチも自ずと導き出されるのかもしれません。

また、英治出版の社員たちは出版業界の経験者ではなく、異業種からの転職者がほとんどだそうです。その理由は採用の仕方にありました。

英治出版の採用方法は、履歴書を送るのではなく、エッセイを送ってもらうことが特徴的です。テーマは「あなたの人生観について教えてください」、「10年後の出版社像」 「世界で気になるニュースは?」の3つ。

このエッセイを社員全員で読み、「この人と仕事がしたい!」と思う人に〇をつける。これは社長も社員も平等の評価だそうで、社長が〇をつけても面接に呼ばれないこともあるとか。このような形で選ばれた社員は、結果的に異業種からの転職者が多いそうです。

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社員の“共感”で物事が決まるのは採用だけではないようで、本の出版を決める企画会議も独特のやり方があるようです。原田さんに伺うと「英治出版の企画会議は、全員が“拍手”をすると企画が成立するんです。提案している企画の準備が整ったと全員が感じた時、拍手が起こるんです。イメージとしては相撲の立会いに似ているかもしれません」とおっしゃってくれました。

全員が意思決定者として主体的に、じっくり議論する。社員全員が「この本、出したいね」となった本だから、売ることにも真剣になれるということなのかもしれません。

創業して十数年が経った頃、原田さんは縮小を続ける出版業界で、いかに会社として新たな価値を提供するか考えました。そこでオープンしたのが、自分たちと共感できる社外の仲間とのつながる場所「EIJI PRESS Base」です。

EIJI PRESS Baseは会費を支払って会員になると、コワーキングスペースのような場所を自由に使い、英治出版の本を何冊でも友人や知人へ献本することができるというユニークな場所です。小さな組織だからこそ、社外の人とのつながりを広げ、関係人口を増やしていくという目的は自然な流れのようにも感じますが、原田さんはそのつながりの質に重点を置いているようです。

原田さんは、「目の前の知り合いが1次(1ディグリー)、知り合いの知り合いが2次(2ディグリー)、知り合いの知り合いの知り合いが3次(3ディグリー)といった関係をたどると、6人目で世界の全ての人がつながるという『6次の隔たり』という仮説があります。私たちは1ディグリーの関係を沢山作るのではなく、1ディグリーの関係を深めていきたい。その深い1ディグリーの関係はおのずと2ディグリー、3ディグリーを引き出してくれる。EIJI PRESS Baseはそんな関係をつくる場所でもあるんです」と仰っていました。

今ではEIJI PRESS Baseをキッカケに、社員やメンバー間で新しいプロジェクトも生まれているようです。社員それぞれが「1ディグリー」の関係を深めてみる。結果として、それは組織のチカラになっていくはずですね。

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1999年から数々のロングセラーやベストセラーを出版してきた英治出版。

前期は過去最高の売り上げと利益を記録。新刊ではなく過去の既刊本(バックリスト)の売り上げがおよそ75%というのは驚くべき数字です。厳しいと言われる出版業界で、「なぜ好調を維持できるのか」「売れる本が生まれるのか」を原田さんに伺うと、「英治出版はゆっくりと成長してきたから強いと思うんです。急に成長し巨大化した恐竜のような会社だと大きな体を支えるためにいくら食べてもお腹いっぱいにならない。これからの企業は、大きな体を支えなければならない恐竜ではなく、鳥の群れのような、チームが集まった組織になった方がいいのではないでしょうか」と仰っていました。

著者を応援する出版社であるという理念を貫いてきた原田さん。いま向き合っている取り組みは、島根県の離島である海士町(あまちょう)で出版社の立ち上げをやっているとか。

離島でのチャレンジについて原田さんは、「今はどこにいても発信できるので、自立型の出版社を地域で起こすこともできると思うんです。そんな出版社を立ち上げることで、地域の人たちにも新しい風が世界から吹いていくといいなと思います」、そんなふうに夢を語ってくれました。

今週のお話から導き出す「WORK SHIFTのヒント」は、『ぶれない“目的”から組織と働き方が作られる!』。「著者を応援する」という目的を常に忘れなかったことで、ロングヒット生む組織と働き方が作られていったのですね。

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