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仕事の「幸福度」は見える化でき、スキルとして自分で高めることもできる――日立製作所フェロー・矢野和男さん

技術の力でさまざまな課題を解決する社会イノベーション事業に取り組む株式会社日立製作所。同社フェロー(特別研究員)であり、ウェアラブル技術やビッグデータの収集・活用技術に多くの知見を持つ矢野和男さんに、“働き方と幸福度”の観点から、これからの仕事についてお話しいただきました。

J-WAVE(81.3FM)の人気モーニングワイド「J-WAVE TOKYO MORNING RADIO」内で、さまざまな企業が取り組んでいる「働き方」から、これからの変化や未来を考える「RECRUIT THE WORK SHIFT」。1日のスタートに「新しい働き方」のヒントをシェアしています。本記事は、過去の放送の中から、株式会社日立製作所フェローの矢野和男さんが考える“働き方と幸福度”に注目します。

1984年に日立製作所に入社以来、半導体の研究開発に長く携わっていた矢野さん。しかし、2000年代に入り、時代の流れと共に、方向転換を余儀なくされました。そこで目をつけたのが、人の行動とデータ。2006年には、他社に先駆け、腕時計型のウェアラブルデバイスを開発。以来14年間、自らのデータも測定し続け、この研究分野の最先端を走ってきました。

矢野さんの研究は、人の幸せや組織の状態という、眼には見えないものを測定し、データとして可視化するというもの。この分野の研究で近年分かってきたことが、「成功したから幸せになる」ではなく、「幸せだと成功する」「幸せだから健康になる」ということ。それは宝くじが当たったなどの外から与えられる瞬間的な幸せではなく、“持続的な幸せ”が大切だそうです。その“持続的な幸せ”はスキルであり、高められると矢野さんは語ります。

その鍵となるのが、「Hope」「Efficacy」「Resilience」「Optimism」と言います。頭文字をとって「HERO」。“内なるヒーロー”と呼ばれているそうです。自分で自分の道を見つける、行動を起こせる、うまくいかなくても立ち向かえる、自分の中でポジティブなストーリーを組み立てられる、ということが“持続的な幸せ”を高めるために大切なことだそうです。

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働く上で大切なのがチーム・組織の状態やパフォーマンスですが、データから見えてきた良いチーム、良い組織とはどのようなものなのでしょうか。

矢野さんは、「個人の能力を足し合わせても、チームや組織の能力になるわけではない」と言います。発言権が平等か、相手の感情を理解できる力がある人がいるかどうかも、チームとしてのパフォーマンスを左右する。

また、個と個のつながり、“コミュニケーション”という面での良い組織の条件について、「いろいろなところがフラットにつながっていること。コミュニケーションの量が多い少ないは関係ありません。会議以外のところでコミュニケーションがなくなるのはアンハッピーな組織です」と語りました。幸せな組織には、“うなずき”など体の動きの同調性も多いということです。 自分たちの組織が今どういう状態なのかを知る、1つの目安になりそうですね。

ビッグデータやAIを使った企業業績の向上や、ウェアラブルによる「幸せ」の数値化で、業界をけん引している矢野さん。20世紀型と21世紀型の働き方の違いを伺うと、「明らかなニーズに対して標準的に対応していく20世紀型の働き方に対して、 多様化し、変化するニーズに、実験と学習を繰り返しながら前進していくのが21世紀型の働き方だと思います」と強調します。

21世紀型の働き方をサポートするものとして、矢野さんたちが開発したのが、働く人の幸福度を定量的に計測、ポジティブなマインドを引き出すスマートフォンアプリ 「ハピネスプラネット」。これは人間や組織の良い状態を測ることができるアプリで、組織の幸せの総量も測ることができるとか。

組織の幸せの総量は生産性にも直結していて、それを改善するための施策として、朝一番に1つポジティブなことを発信してもらうということもやっているとか。これによって持続的な幸せは33%向上し、業績との換算式に入れると、10%の営業利益向上に相当したそうです。

先が見えない、変化の激しい時代だからこそ、そこを歩くための羅針盤のようなアイテムをゲットすることも大切ですよね。

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新型コロナウイルスに直面している私たちが今まさに実験と学習を繰り返しているのが、リモートワークなどの働き方。リモートワークを“働き方と幸福度”という視点で見るとどうなのか? 矢野さんは「短い会話、うなずくなどの非言語的コミュニケーションが少なくなりがちです。そこをあえて積極的にやってみることが大事だと思います」と仰っていました。

国連が発表している「世界幸福度ランキング」で、日本は2018年が54位、2019年が58位、今年はさらに4つ後退して62位となっています。働くことの究極の目標である“幸せ”、幸福度が下がってしまっているのが今の日本の現状ですが、これからの日本に必要なことを矢野さんはこう考えます。

「以前、ポーランドで空手を習う機会があって、その時、空手は他人を倒すためにやるものではなく、昨日の自分を超えていくためにやるものだ、と言われたんです。その時、これは日本に昔からある“道”という概念だと思いました。私たちはそこにアドバンテージがある。働き方に関しても、これからの変化の激しい時代、昨日の自分を超えていくことを日本人のルーツに戻ってやっていくといいと思います」と仰っていました。

今週のお話から導き出す「WORK SHIFT」のヒントは、 『仕事の幸福度は見える化でき、自分で高めることもできる!』でした。

自分の働き方、チームの状態、今はそれをデータ化し、自分で確認することができます。変化の激しい道を進むのであれば、そんなテクノロジーも活用して、昨日の自分を乗り越えていく必要がありそうです。

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■「RECRUIT THE WORK SHIFT」バックナンバー

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