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制度をしっかりとつくり、適切に運用すれば、結果は自然とついてくる――三共精機

1948年に創立した三共精機株式会社は、京都に本社を置く機械工具商社として、切削工具・測定機器・工作機械などを販売している企業です。現在、社員は76人。そのうち約30人が女性、7人は外国人です。

J-WAVE(81.3FM)の人気モーニングワイド「J-WAVE TOKYO MORNING RADIO」内で、さまざまな企業が取り組んでいる「働き方」から、これからの変化や未来を考える「RECRUIT THE WORK SHIFT」。1日のスタートに「新しい働き方」のヒントをシェアしています。本記事は、過去の放送の中から、制度や仕組みの再構築がもたらした“自然体”の改革を進める「三共精機株式会社」の取り組みをご紹介します。

「給与・処遇制度」一本化の裏側

まず、同社における「働き方改革」の第一歩となったのは、2007年、まだ「働き方改革」という言葉も概念もない時代に、社員の給与・処遇制度を一本化したことでした。

同社代表取締役会長・石川武さんによると、当時は外勤の営業担当を男性が務めており、その人たちがお客さまから注文書をもらい、それをアシスタントだった内勤の女性事務員がコンピューターに入力していました。そんな中で、「社内にいる人も同じように営業担当としてやれないか?」というのが最初の発想でした。

主にお得意さまのリピートによって商売が成り立っていた会社だったこともあり、伝票処理する人は、売り上げに対してそれほど思い入れがないと、単に作業をしているだけになりがちです。そうではなく、内勤の人も外勤の営業担当者と同じ感覚で仕事ができれば、同じ陣容で売り上げが上がる可能性があると考えたそうです。

石川会長

石川武会長

しかし、このように「チームの意識を合わせよう」と促す場合、営業担当・アシスタントで、それぞれ処遇が違うとモチベーションが上がりません。それを一本化させたことで、社員全員が「私たちもがんばらないと!」と思うようになっていったそうです。

チームの力で苦境も乗り越える

続いて、給与・処遇制度の一本化による社内の反応についても伺いました。石川会長は、社内からいろいろな反対もあったものの、ここは時間をかけるしかない、と思っていたそうです。

「内勤の人の給料が上がる」、それはつまり「総務・経理の給料も上がる」ことを意味しています。制度の一本化により、営業担当に与えられていた報奨金も廃止したため、外勤・営業を担う側からすれば「なんでやねん!」となったとか。

しかし、「その原資はみんなで分けよう」というのが、石川会長の考えでした。大口案件を取ってくることができたのは、個人の手柄ではなく「チームの力」。現有戦力で、いかに売り上げを上げていくかを考えると、競争よりは「連携」した方が良いという考え方です。

制度を変えた直後の2008年にリーマンショックが起こりますが、制度を一本化していたことで「みんなで我慢しよう」という気持ちになり、苦しい時期を全員で乗り越えることができました。その後は、「一本化した制度が当たり前」になっている人たちや外国人の方々も加わり、多様性のある会社となっています。

会社が多様化したことは結果論だった

さらに、給与・処遇制度を一本化させた当時、同社内では何が起こっていたのかを伺いました。

社内様子

当時、改革の原動力の一つになったのが女性だと、石川会長は話します。女性が原動力となったのは、処遇が社員全員で一緒になったことが要因であり、また優秀な中国人の方が新卒で入社したことも、会社全体として多様化するきっかけになったとのこと。しかし、こうした動きは多様性を追求したからでなく、「結果論」だと石川会長は強調します。

つまり、「いろいろな改革をやっていく中で、例えば女性の活躍であったり、障がいのある方であったり、定年後の方であったり、さまざまな方と一緒に仕事ができる『しつらえ』をすることで、多種多様な方々が三共精機に来るようになり、外部から見ると『多様化』していた」ということ。このような多様化には実際、「営業の仕方」や概念が大きく変化していることも大きな要因となっていると言います。

石川会長は、営業の仕方や概念について、こう語ります。

「昔、営業担当は仕事を外から取ってくる人でした。いまはメールやウェブサイトで受注・発注業務を行っていますから、内勤も外勤もない。知恵があって、お客さまに提案し問題解決が図れることができれば、それが一番いいんです」

また三共精機では、労働時間の削減のために、当初は全員に「みなし残業」をつけ、それをみんなで減らしていくことを目標にしたそうです。そのために必要となってくるのが、「業務の分担」です。業務の分担においては、情報をシェアしたり、知識・売り上げに関して同じような感覚を持ったりすることが大切です。そして、そのときに効果を発揮したのが「制度の一本化」でした。

「会社の本気度」を示すことで、制度を進める

石川会長は、同社の制度を進める上で「会社の本気度」を示すことの大切さを、意外な形で示しました。

「労働時間を減らそうとしたとき、最初に変えたのはコピー機でした。とにかく一番速いコピー機にしました。以前のものは、コストが安い代わりにちょっと遅かったんです。その『ちょっと』を減らすために、コピー機すべてを入れ替えました。これで『会社は本気だ!』ということを示したんです」

今後の課題についても、石川会長にお話しいただきました。

「『働き方改革』は、最初は労働時間のことでしたが、最近では『健康経営』も大切になっています。体・心・頭が大事で、この3つを刺激することが、健康に働くことにつながるんです。心身ともに元気でないと働けないですから、どうやって気持ちを楽に持ちながら、適度なプレッシャーを感じつつやっていけるかが、課題の1つ目。もう一つは、中高年になってからの仕事へのモチベーションをどう保つかです。これについては、会社側から指摘するのではなく、制度を整えることが大切なんです」

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三共精機株式会社のお話から導き出す「WORK SHIFT」のヒントは・・・『制度をしっかりとつくり、適切に運用すれば、結果は自然とついてくる』でした。

信念を持って制度を運用することが、自然体の改革をもたらします。

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