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IT活用で教育現場はどう変わる?

リクルートで働くその道のプロが「仕事探し」や「学び方」「美容」や「食」といった様々なテーマの最新トレンドについて語る番組『トレンドランナー』。第六話のテーマは「学び方の最新トレンド」。スタディサプリ教育AI研究所所長をゲストに迎え、後編は「教育とテクノロジー」について聞きました。

藤井:リクルートがお送りするポッドキャスト「トレンドランナー」。引き続き、スタディサプリ教育AI研究所の小宮山利恵子さんにお話しいただきます。よろしくお願いいたします。

小宮山:よろしくお願いします。

八角:前回のテーマは「社会人の学び直し」でしたが、今回、小宮山さんに解説いただくのは「教育とテクノロジー」です。

日本の教育現場で活用されているテクノロジーって?

藤井:まずは、日本の教育現場でのテクノロジーについて伺っていきたいと思います。

いま日本の教育現場で活用されているテクノロジーってどんなものがあるんでしょうか?

小宮山:日本の教育現場では、様々なところでテクノロジーが使われています。生徒の学力ってバラバラなので、先生1人に対して30人、40人の生徒を見るというのは、とても大変なんですね。

先生は誰に照準を合わせて授業をしていいかわからないという課題もあります。そういった課題に対して、「スタディサプリ」などを利用いただいて、一人ひとりの習熟度に合った学びの実現を目指されている現場もあります。

藤井:「スタディサプリ」は、個人の勉強向けというイメージもあるんですけど、学校といった日本の教育現場のなかにも入ってるんですね。

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もはやスマホは文房具?重要なのは使い方のルール

これから小学生や中学生の授業ではプログラミングも必須になってくる…みたいな動きもあると聞きますが、こちらはどうでしょうか。

小宮山:そうですね。まさに2020年度から小学校で必修科目になってくるんです。
去年の12月に小中学生に1人1台パソコンを整備すると政府が発表しました。これまでは、自治体によって整備状況にバラつきがあったんですが、数年かけて改善されていく予定になっています。

藤井:でも、教育現場にはテクノロジーがどんどん入ってくる一方で、スマホは子どもの教育に良くない!Webを長時間閲覧するのは良くない!みたいな意見もあるようですが、その点はどうでしょうか?

小宮山:たしかに賛否両論ありますね。
例えばスマホが教育に入ってくるという事例では、先日、神奈川県の教育委員会が、生徒が持っている私物のスマホを授業で活用できるシステム環境を、県立の高校全144校に整備したという報道がありました。これは前提として、生徒の97%以上がスマホを所持していた、ということを踏まえて活用することに決定したということが背景でした。

そうやって考えてみると、スマホは昔の「そろばん」の代わりではないですが、もはや文房具のひとつになってると思います。ただ、やはり長時間見てしまうこともありますよね。なのでルールの整備がすごく重要かなと思っています。

藤井:テクノロジーは道具だから、道具を使う前に「道具ってこういう危なさもあるし、良さもあるし、だから使い方のルールをちゃんと決めましょうね」っていうのをやらないと…ということですね。

世界で進む教育現場でのテクノロジー活用

では今度は、子どもたちの教育現場におけるテクノロジー導入について、日本と海外の違いを教えてもらえますか?。

小宮山:昨年12月に公表されたOECDの調査によると、日本では約80%が授業中にテクノロジーを活用していないという結果が出ています。

藤井:えぇ先ほどの神奈川県の例は先進事例なんですね!

小宮山:はい。まさに。一方で、子どもたちは授業でテクノロジーを使いたい!と言っているんですね。そこに大きなギャップがあるなと思っています。

藤井:ということは、海外では、教育現場にテクノロジー導入が進んでいる国とかもあったりするんですか?

小宮山:例えば、エストニアという国は、テクノロジーを用いた教育では最先端です。
小学校1年生のスマホの所持率が90%を超えていますので、自分のスマホを学校に持ってきて学ぶというのが普通となっています。

もう一つの例はアフリカのルワンダです。
2024年までに小学生全員に1人1台パソコンを配備すると決めています。実はルワンダはITへの投資を積極的に行っていて、IT企業が多く参入しています。その一環として、教育にもテクノロジーが入ってきているという状況なんです。

テクノロジーが叶える「新しい教育」

藤井:なるほど。日本は、神奈川県の例のように海外を追いかけようとしてますが、実はそのもっと先に、強烈に進もうとしている世界の動きがあるってことですよね。

小宮山:そうですね。いまの日本の子どもたちが大人になったときに、テクノロジーを導入して教育を受けた子どもたちと一緒に働くことになるかもしれないですが、ここで差が出てきてしまうな…と思います。

藤井:スマホのようなテクノロジーを教育の場に持ち込むのは、悪いことばかりではないよね、という話ですねぇ。

小宮山:そうなんです。まず、習熟度別の学びというのが可能になります。すぐに調べられることは調べて、あとで考える時間を多く持つことができるんですよね。言ってみれば、処理の時間を短くして「考える時間」を増やすということができると思います。

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ほかには、特別支援学級でもスマートデバイスが活用されています。例えば、集中力がすぐ途切れてしまう傾向があるお子さんに、スマートデバイスを与えて漢字の練習をしたところ、10~15分集中して学ぶことができたという例もあります。

藤井:前回の「社会人の学び直し」で伺ったAIに代替されない能力で「創造力」と「共感力」というのがありましたが、テクノロジーはこれらを補完していく可能性がありますよね。テクノロジーによって創造力や共感力を磨くおもしろいメニューも増えていきそうですよねぇ。

小宮山:例えば、絵を描くのにテクノロジーを活用するというものもあるんです。
ちょっとした落書きが一瞬で作品になるというコンテンツもありまして、絵を描くことに苦手意識をもった子どもたちにはすごく親しみやすくなるということで、使われている事例もあります。

藤井:なるほど、創造力をテクノロジーが逆に掻き立てていく…と。

小宮山:意欲を掻き立てることについても、テクノロジーはサポートできると思います。

先生の役割は「教える人」から「コーチ」へ

藤井:本人だけでなくて、先生側も、1人で大勢の子どもたちをきめ細かく見ることが難しかったけれど、テクノロジーによってできるようになりますよね。

小宮山:今まで採点に時間をかけていたのがテクノロジーによって1秒で終わってしまうということもあり得ます。その空いた時間で子どもたちを見ることができるので、先生方にとっても負担の軽減になると思います。

藤井:テクノロジーによって、先生が、子どもたちに「教える人」ではなくて、「コーチ」のように変わっていくんですかね。

小宮山:はい。先生の役割も、いままでは生徒に何かを教えることからクラスをファシリテートする…つまり管理やマネジメントするのが主な役割になってくると考えられています。潜在的な能力を見つけて、育ててあげるという役割も大きくなるんじゃないかなと思います。

藤井:先生側もテクノロジーをうまく使いこなせていけば、楽しくなりそうですね。

小宮山:そうですね。先生方はもともとすごく真面目な方が多くて「子どもたちのため」と思う方がとても多いので、「子どものためになるんだったらテクノロジーを使っていろいろ工夫してみよう!」と思われている先生も多くなっていますね。

テクノロジーと教育現場の未来とは?

藤井:ということで、一人ひとりの可能性を開く「教育とテクノロジー」について伺ってきましたが、最後に小宮山さんにこんなふうに教育現場にテクノロジーが導入されていったら、もっとおもしろくなるんじゃないかという未来について教えてください。

小宮山:子どもたちは新しいテクノロジーに触れること自体、とてもワクワクするんですね。それで学習意欲がわくっていうことは、とてもいいことだと思います。一方で、五感を使ったアナログな学びとのバランスが重要になってくるなと思います。

テクノロジーはあくまでも「ツール」なんですね。創造力は五感を使って磨かれることが多いので、その時間を十分に確保したいなと思います。

藤井:ということで、今回のゲストはスタディサプリ教育AI研究所の小宮山利恵子さんでした。ありがとうございました。

小宮山:ありがとうございました!

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