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働き方の新しい発想が、ビジネスそのものを大きく進化させる――ワールドファーム

有限会社ワールドファームは、野菜の栽培から加工までを手がけることで1日8時間勤務を実現した2000年設立の農業法人。茨城県つくば市に本社を構え、従業員はおよそ100人です。

J-WAVE(81.3FM)の人気モーニングワイド「J-WAVE TOKYO MORNING RADIO」内で、さまざまな企業が取り組んでいる「新しい働き方」から、これからの変化や未来を考える「RECRUIT THE WORK SHIFT」。本記事は、過去の放送の中から、「有限会社ワールドファーム」の取り組みをご紹介します。

すべては「儲かる農業」実現のために

同社経営企画室 室長・櫻井勇人さんは、「従来の農業の売り上げが安定しないのは市場価格や天候に農作物の価格や取れ高が左右されるから」だと考えています。

そこで、栽培から加工、BtoBによる取引販売までを自分たちで手がけることができれば、事業の安定的拡大につなげられると考え、会社の設立当初から農業・加工業・卸売業をミックスした“農業の6次産業化”に取り組んできました。現在では、茨城県の他、熊本県、鳥取県、石川県など、それぞれの農場で採れた野菜を、自社工場でカット野菜などに加工、出荷、「儲かる農業を実現している」と言います。

有限会社ワールドファーム 経営企画室 室長・櫻井勇人さん

同社が“農業の6次産業化”に取り組んできた目的は、「事業を安定的に拡大させるため」ですが、他にもう一つあります。

それは、30年以上問題視され続けてきた、“働き手の高齢化”問題を解決する、ということです。現在の農業者の平均年齢は67歳。半数以上が75歳で新規就農者は少なく、農業を維持していくのは大変厳しい状況です。この状況を打開するには、農業のあり方そのものを変える必要があり、そのためには、担い手の育成が重要になると考えたのです。

だからこそ同社は、6次産業化=儲かる農業を実践することで人材を多く雇用し、人を育て、育った人に地域を牽引するリーダーとなってもらい、リーダーの下でまた農業に携わる人が増えていく……という正のスパイラルをつくることに力を入れているのです。

無駄を減らし、人を育てる

「社員が農業と加工業の一人二役をこなす」のが、ワールドファームの社員の基本的な働き方です。例えば、生鮮カットのキャベツを扱う茨城本社の社員は、午前中は工場で加工作業、午後は農作業に充てています。

農業という仕事では、キャベツを植えたからといって、次の日にすぐ別の作業があるわけではありません。農作物によって作業日程にはバラツキがあり、空きの時間を有効に使わない限り、どうしても労働の生産性にムラが出てしまいます。だからこそ同社では、会社が丸ごと“兼業農家化”し、社員は兼業の部分を加工の時間に充て、無駄を減らしているのです。

また、細かく分業して集団で取りかかる=「畑の上に工場のラインをつくった」ことにより、作業時間は圧縮され、一人あたりの労働負担も減少したそうです。

集団で収穫などを行うため、通常の農作業の現場であれば一人1,000時間かかるところが500時間で済む他、効率の良い作業が可能になっています。従業員の作業時間は年間2,000時間で、その半分の1,000時間は工場の作業に、500時間は農作業にあて、残りの500時間は人材育成や新規事業などのチャレンジに活用しているということです。

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だから農業の6次産業化なんだ!

ワールドファームの基本的な就業時間は、朝8時~夕方5時の8時間です(昼休憩は12時~1時)。ただしその運用は柔軟に行われており、夏の暑い時期にキャベツを加工せずに出荷する際の就業時間は、朝7時~夕方4時などに変更しています。

このような8時間労働が徹底できるのは、先に触れた、工場のラインのような「分業の徹底」、そして、一つの作業に頭数をかける「集団農業」がきちんと機能しているからです。例えば、10アールの農地で3,500個のキャベツを一人で収穫するには1日かかりますが、10人で作業すれば10分の1、20人だと20分の1で済みます。さらに集団農業の分業化で1人あたり30分の作業で済むのです。

同社は基本的に週休2日です(繁忙期は例外あり)。農業の6次産業化に取り組んだことで生じた“農作物のゆとりある管理”が週休2日の実現につながっているのです。その効果は週休2日だけに留まらず、農作物の収量効率向上にも現れています。

農業の6次産業である同社は、原料調達の部分も自分たちで決められるので、収穫の適期を10日過ぎた青果であっても、収穫を急ぐ必要はありません。週末を休んで収穫までの日数がさらに延びたとしても、その間キャベツは育ち、収量が増えることによって加工効率が上がることになるのです。

しかも、適期を10日過ぎた農作物は規格外扱いです。以前は「見た目が悪い」というだけで捨てられる運命にあった規格外の農作物が、加工品の原材料となるわけですから、良いことづくめです。

キャベツ加工風景

女性に開かれた農業であるために

野菜の栽培から加工、出荷までを担う「農業の6次産業化」に取り組むことで、農業の働き方を根本から変えてきたというワールドファーム。同社の取り組みは、女性が活躍する場を大きく広げることにもつながっているようです。

ワールドファームの従業員数は約100人、平均年齢は30歳です。常日頃から作業は集団で行い、分業・役割分担を明確化している同社にとって、女性・男性の仕事の区分はありません。

櫻井さんによると、「女性にやっていただいても問題ない仕事ばかり」だと言います。加えて、「トラクターなど機械を使った作業も、どんどん女性にもやってもらいたいし、今後機械化できるところはどんどん機械化して、仕事上の身体の負担を少なくしたい」のだとか。

「現在、産休・育休利用中の女性社員も在籍中、就業規則上の制度も設けられているので、女性も入ってきやすい職場になっているのではないか」ということです。

今後については、社員のモチベーションを上げる施策に取り組んだ上で、さらなる仕事の機械化・自動化を進め、ICTを活用した取り組みも行っていく、とのことです。現在の効率を超える最先端技術を活用した農業を行い、並行して収穫や定植など、体を使わざるを得ない場面での仕事も自動化して労力の削減と疲労の軽減も図りたいとのことでした。

ワールドファーム集合写真

有限会社ワールドファームの取り組みから導き出す「WORK SHIFT」のヒントは・・・『働き方の新しい発想が、ビジネスそのものを大きく進化させる』でした。

伝統的な農業の仕組みも、新しい働き方が変えていきます。

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■「RECRUIT THE WORK SHIFT」バックナンバー

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