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業界という群れから飛び出す決断が、会社を大きく変える――小田島組

株式会社小田島組は、岩手県北上市の建設会社。公共工事で業績を伸ばしており、従業員はおよそ150人です。

J-WAVE(81.3FM)の人気モーニングワイド「J-WAVE TOKYO MORNING RADIO」内で、さまざまな企業が取り組んでいる「新しい働き方」から、これからの変化や未来を考える「RECRUIT THE WORK SHIFT」。本記事は、過去の放送の中から、「株式会社小田島組」の取り組みをご紹介します。

女性を受け入れられる会社に変わる

「5年ごとに作成している」という会社の発展計画に沿って5人の女性を採用したことが、同社が働き方改革に取り組むきっかけになりました。「同社にとって初めて、高校生の新卒女性社員の採用」が、会社がいかに“若い女性が働くことに対応していない場所”であるのかを白日のもとにさらしたからです。

その現実を認識した代表取締役の小田島直樹さんは、会社にはこの先、「2つの選択肢がある」と考えます。

一つは、「若い女性の採用はやめる」ということ、そしてもう一つは、「女性を受け入れられるように会社が変わる」ということでした。最終的に、建設業界に若い女性が入ってくるようにならなければ業界の発展はないと決断し、それが働き方を変えるスタートになったといいます。

「女性を受け入れられるように会社が変わる」ために、真っ先に取り組んだのは、ITを使って業務を見直すことでした。それまでの業務を細分化し、仕事の経験値などに応じて作業を分担、若い女性と経験のある男性社員がチームで仕事に取り組めるよう体制を整えたのです。

同時に、女性社員を育てる教育環境にも力を入れました。建設業界ならではの「仕事は目で見て覚えろ」というスタイルから、動画を使うなどして論理立てて、仕事を学んでいくスタイルへと転換を図ったのです。

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株式会社小田島組 代表取締役・小田島直樹さん

見栄えと内実の一致こそが、最高のリクルーティング!?

以前は男性の職場だと考えられていた建築・建設業界において、ITを利用することで、女性が活躍する場所を増やしてきた小田島組。

その改革を進めてきた小田島さんは、「ソフトの使い方を覚えることは、建設業の仕事を覚えることに近い」と考えています。ソフトの使い方を覚えることは機械の使い方を覚えることにつながり、機械が使えることは建設業の仕事の7〜8割方、対応できるようになるからです。

以前であれば、土木工事の際、測量は重い機材を使って二人一組で行っていましたが、今は事前にデータさえ打ち込んでおけば、自動追尾の機能を持った機械が自動的に測量してくれます。男性2人で取り組んでいた仕事が女性一人で対応できる。それは、大きな進歩でした。

次に小田島組が取り組んだのは、若い人材にとって魅力的な会社になるための改革でした。採用時に会社側がどんなに魅力的なことを伝えたとしても、入社してからの実際の環境が良くなければ、入社者の間でその情報はあっという間に広がってしまいます。では、継続的に若い人たちが入ってくるようにするにはどうすればいいか。

小田島さんは、外から見られる会社の姿と会社の内実を一致させることに力を入れます。その際に活用したのが“外圧”でした。

周囲に「立派な会社だ」と思われるようなことを明言することで、「それを実現せざるを得ない」環境に自らを追い込むのだといいます。例えば、一般社員で年収1,000万円プレーヤーをつくりたいと3年前に公言し、それを実現しました。現在は、若い社員に40歳までに1,000万円獲れるようになろうと伝えています。

目標設定をし、あえてそれを宣言することで社員のモチベーションを高める。それを実現してしまうところに、小田島組の会社と社員の強い信頼関係がうかがえます。

仕事の生産性をグンと上げる「通勤改革」とは?

小田島組があるのは、本州で一番面積が広い岩手県。社員は自分の車で通勤することが常識となっていました。そこで取り組んだのが、通勤時間を利用して生産性を上げる「通勤改革」です。

小田島さんによると、そもそもこの改革は、「生産性の高い東京の企業の社員」に負けない社員を育てたいという思いから始まったと言います。

では、自分たちの生産性を上げるためにはどうしたらいいか。

いろいろと考えを巡らせたときクローズアップされたのが、「通勤時の移動手段」でした。東京の会社員のもっぱらの移動手段は、電車やバスなどの公共交通機関です。そして移動時は、PCを開いて仕事をしている人が多い。それに対し、岩手の社員の移動は車で行われ、運転中は仕事がまったくできません。ここに、「生産性」が開く根本原因がありました。

小田島さんは、IT化の到来した現代は、いつでもどこでも仕事ができる体制が整っているわけなので、通勤は公共交通機関を使ってもらおうと考えました。電車やバスの中での移動中も仕事をしてもらい、それを就業時間に繰り入れます。そうすることで、「実質、通勤時間がゼロになる」という考え方です。

通勤時も就業時間にカウントされることで空き時間が増え、社員たちは“自分の時間”を持てるようになりました。自分の時間を「仕事のスキルを磨くことにあてる人」「息抜きにあてる人」など、時間の使い方は人それぞれですが、この取り組みは若い社員を中心に広がっているそうです。

小田島さんは、仕事の目的は真面目に取り組むことにあるのではなく、アウトプットを出すことにあると考えています。

社内では真面目に仕事に取り組んでいるふりをして、頭の中ではまったく何も考えていない人と、外出して仕事をサボっている人、どちらも会社にとってはよろしくありません。なぜなら、仕事の姿勢の良し悪しに差こそあれ、どちらもアウトプットはゼロだからです。そのため現在、小田島組はアウトプットの管理へと移行しています。

「真面目にやったかどうかじゃなくて、アウトプットしたかどうか。タスク管理、ジョブ管理に移行することは、精神的にも生産性的にも健全でいい方向です。真面目にやることの価値は本当にないです、表面上ね」

小田島さんはこのように、アウトプット管理の背景を説明してくれました。

人手が足りないのは会社の魅力が足りないからだ!

若い女性の採用や通勤改革など、多くの改革を進めてきた小田島組。小田島さんは、これら改革の目的は「人への投資にある」と言います。

現在、小田島組の社員数は約150人。そのうち10〜20代が約100人で、その約半分が女性です。今後も若い人に入ってきてもらうためには、「ITを使って会社を仕組化しなければならない」と、小田島さんは考えています。売り上げや規模を拡大できるのは若い社員がいるからこそ。だから改革の目的は、若い人たちが輝くこと・人への投資です。

さまざまなことに取り組んできた結果として、小田島組は2017年から2年連続で厚生労働省のユースエール認定を受けました。そして、会社の売り上げは過去10年で倍増したと言います。

現在の地方企業が抱える人手不足の問題の本質は、企業の“魅力不足”にあると、小田島組は考えています。今の若い人は、お金や待遇にひかれて働くのではない。生きるために働くわけでもない。ワクワクすること、面白いことに出会いたくて仕事をするのです。

「生きるために働く、なんてつまらないことを言うな。自分だけの夢とか希望とか、やりたいことを一緒に探していこう。それが、苦労して裕福な時代を築いてくれた祖父母、両親世代に対する一番の恩返しだから」

小田島さんはこのように訴えかけることで、若者たちの心をつかんできたのです。

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株式会社小田島組の取り組みから導き出す「WORK SHIFT」のヒントは・・・『業界という群れから飛び出す決断が、会社を大きく変える』でした。

若い人材が集まる会社は、トップ自らが仕事を楽しみ、「みんなで楽しんでいこう」という思いを社員たちに伝えながら組織を大きくしていくのです。

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■「RECRUIT THE WORK SHIFT」バックナンバー

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