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ダイバーシティ経営で、“行きたくなる会社”に!――本橋テープ

静岡県吉田町にある本橋テープ株式会社は、1986年設立で、幅13cm未満の「細幅織物(通称:テープ)」を製造・販売する会社。ダイバーシティ経営を推進し、社員は現在48人、うち男性15人、女性33人となっています。

J-WAVE(81.3FM)の人気モーニングワイド「J-WAVE TOKYO MORNING RADIO」内で、さまざまな企業が取り組んでいる「新しい働き方」から、これからの変化や未来を考える「RECRUIT THE WORK SHIFT」。本記事は、過去の放送の中から、「本橋テープ株式会社」の取り組みをご紹介します。

地方の小さな会社が「人集め」に成功するには?

細幅織物(テープ)はもともと吉田町の地場産業で、バッグのショルダーベルトやストラップなどさまざまな日用品に使用されています。

本橋テープは、2007年に細幅織物を利用した製品開発を行ってメーカー向けに完成品を提案、そしてエンドユーザー向け製品の販売を行う新分野へと進出していますが、新分野への進出を成功させるきっかけとなったのは、地元商工会が開いた経営革新塾で得た「個人に売るのではなく、小売りを得意としている業者やメーカーに完成品を売るのはどうか?」というアドバイスでした。

もともと同社は、新製品として「携帯ストラップ」を開発していました。ところが、「売る」ことが大の苦手の同社は販売面で大苦戦、ストラップの在庫は積み上がるばかりで、早急に解決すべき経営課題となっていました。

そんなとき、代表取締役社長の本橋真也さんが参加したのが、地元の商工会が開いた経営革新塾で、そこで得たのが前述のアドバイスだったというわけです。

本橋社長
本橋テープ株式会社 代表取締役社長・本橋真也さん

完成品をメーカーに提案していくためには、機械仕事だけでなく人による加工仕事も必要になってきます。そして、加工仕事を担うためには「人集め」が必要になります。

そもそも、知名度の低い地方の小さな企業が「人集め」を成功させるには、「働く環境を良くすること」「長く働いてもらう環境を整備すること」が大事。こうして始まったのが、同社の働き方改革だったのです。

本橋さんによれば、当時社長だったお父さまはアットホームな雰囲気が好きで、BBQや旅行などを積極的に行っていたものの、社員の待遇面について優先的に考慮していたわけではなかったと言います。しかも、長時間労働は当たり前という時代で、「根性論」が優先される意識が根強く残っていました。

しかし、この社内風土を根本的に変えない限り、若い人は入ってきてくれない。女性も働きにくい……ということで、社員の「意識改革」に着手。

それが奏功し、社員の紹介で入社してくる人など、少しずつ働き手の数が増えていきます。また、地元メディアに出ることを奨励したことも、「人集め」には効果を発揮したそうです。

アットホームな雰囲気は大切にしながらも、これまでの労働観とは決別、その上でメディアへの露出を積み重ねていった本橋テープ。人集めには、このような地道な作業が必要なのです。

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行動計画なくして意識改革なし!

2010年、静岡県の「男女共同参画社会づくり宣言」推進事業に参加したことが、さらなる働き方改革へとつながっていきます。

「性別による仕事の差をなくそうという取り組みをしている中で、“男女共同参画社会づくり宣言”という制度があると伺い、参加しました。この宣言を対外的に発表すれば、社内の仕事に対する意識も変わるだろうという期待もあって、比較的早い方だと思いますが、宣言をしたんです」と本橋さん。

女性も男性が従事することが多い仕事に入る。逆に、女性が従事することが多い仕事も男性が担当するようになる、という考え方には当時、「反対」というより、「理解に苦しむ」という人が多かったのかもしれません。

“自分の慣れ親しんだ仕事のスタイル”を変えるのは難しいことですし、実際、長い期間働いている年配の人ほどスタイルを変えるのに苦戦しています。だからこそ、会社として対外的に行動計画を発表することが肝要なのです。

意識改革を実現するためにはやはり、行動計画を対外的に発表し、「会社はこうした方向を志向しているんだ」ということを周囲に知ってもらうことが必要でした。

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一方、役職名を変えることも、意識改革を後押ししました。

例えば部長・課長という役職名がありますが、この役職名には「すべての領域の仕事を把握していて、すべての仕事ができる人=オールマイティな人」というイメージが付着しています。だからいつしか部下も、部長・課長に対し、“万能”であることを求めるようになります。

しかし、どんなに長く第一線で働いている部長・課長でも、ITなどの新しい分野には素人レベルの知識しか持っていないということも生じてきます。新しいデジタル技術が生まれ、どんどん世の中のデジタル化が進む現代です。「どんなに広範な知識と経験のある年配者であっても、それをも率先していくのは難しい」と考える方が自然でしょう。

そこで同社では、上に立つ人がすべてを担うのではなくて、得意な人が得意なことを担っていくことが大事だと考え、上司の役割と役職名を2つに分けました。

具体的には、①専門性・技術的側面を評価されている上司、②マネジメント力を評価されている上司の2タイプです。前者は技術に特化した仕事を、後者は人事管理や目標設定など管理者としての仕事をしてもらいます。

役割を分けたことに伴い、「主任」「課長」「部長」としていた役職を、技術系は「テクニカル・リーダー」「テクニカル・サブリーダー」、マネジメント系は「マネージャー」「サブ・マネージャー」へと変更しました。

時間はかかりましたが、これらの取り組みによって、同社の管理職層は「全部自分でやらなきゃ」という呪縛から解き放たれたようです。

商品写真

看板商品「拵トート」誕生の秘密

2007年から働き方改革をスタートし、2010年「男女共同参画社会づくり宣言」に参加したことから女性の雇用が進みましたが、実はこれが本橋テープの新商品の開発にもつながりました。

例えば、同社の看板商品の「拵(こしらえ)トート」は、現場の女性の「もったいない」という声から生まれました。それまで捨てていたテープの切れ端を使ってバッグを作るという、女性ならではのアイデアをかたちにしたものです。

また、多機能テープの「ルーティ」は、海外向けバッグの飾りとして使われていたテープに強度を持たせれば、さらに用途が広がるという考えのもとに作ったもの。特許も取って、アウトドア分野でヒットしています。

このように、女性が増えたことによって新商品の開発が活発化した一方で、働きやすい環境整備も進んでいきます。

同社では、気軽に休める「風土づくり」が大切だと考え、早くから「時間有休」を導入しています。学校行事や子どもの病気などで、仕事を休まざるを得ない子育て中の社員が1時間でも気軽に有休を取れるように、と制度化されました。

この制度をできるだけ使ってもらえるように、「『1時間有休』を取るのは悪いことじゃない、良いこと!」という声かけを行った成果か、有休取得の意識も随分と浸透。最近では、若い人だけでなく、年配者も積極的に使っているとのことです。

制度は使われてこそ「制度」。そして、使われれば使われるほど、磨きがかかって使いやすくなっていくのです。

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仕事にゴールはあるが、働くことにゴールはない

女性を積極的に採用するダイバーシティを推進することで、ヒット商品を生み出してきた本橋テープではさらに、雇用延長や障がい者雇用などで、従業員たちの働き方の幅を広げています。

通常、本橋テープでの定年は60歳です。しかし同社では、働きたい方には、仕事がある限りは働いていただくとして、高齢者も雇っています。

「一つひとつの仕事に対しての目標やゴールは定めるが、“働く”ということに関して、ゴールはなくてもいいのでは」という、本橋さんの考えがベースにあっての雇用です。

高齢者の雇用は、想定を超えたメリットも同社にもたらしました。人生経験豊富な高齢者ならではの包容力や人の気持ちを理解する力が、会社を“やさしさ”の滋味に富んだ場所へとつくり替えているのです。例えば、障がいのある方を雇用したときには、年配の方がその人の面倒をよく見てくれたおかげで、長く活躍できる会社の戦力へと成長したと言います。

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今後の目標について、本橋さんは「会社に行きたくなる会社にしたい!」とハッキリと答えました。そして、このようにも続けました。

「朝起きたら真っ先に『今日、会社に行ったらあれをやってみよう!これもやってみよう!』というモチベーションが、湧き上がってくるような会社づくりをしたいんですよね」

自分で考え・自分で行動し、成果を上げられる取り組みをしよう、という行動規範にのっとって、社員一人ひとりが目標に向かって挑戦できる。目指しているのは、そんな会社づくりでもあるそうです。

本橋さんによると、このとき大切にしなければならないのが、「急ぎすぎない」ということ。大樹が年輪を刻んでいくように、同社も1年ずつしっかりと成長していく芯の強い会社になれれば、という目標も掲げています。


本橋テープ株式会社の取り組みから導き出す「WORK SHIFT」のヒントは・・・『ダイバーシティ経営で、“行きたくなる会社”に!』でした。

“行きたくなる会社”なら、おのずと業績もアップするはず! ちなみに本橋テープさん、今後は教育分野の商品開発にも力を入れていくそうです。

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■「RECRUIT THE WORK SHIFT」バックナンバー

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