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職場環境をより良く充実させて生産性をアップ!――田代珈琲

大阪府東大阪市にある田代珈琲株式会社は戦前の1933年に創業。創業時の屋号は「田代兄弟商会」で、シロップの製造を主な事業にしていました。その後、屋号の改組とともにコーヒーの製造を開始。戦争突入とともに一時期会社は閉鎖されてしまいますが、戦後、コーヒー卸会社として再スタート。

1985年には、本社移転を期に卸業から小売業へと業態を転換しました。業態転換後も試行錯誤を繰り返し、現在はコーヒーの輸入・販売を実店舗やインターネットで手がけています。

J-WAVE(81.3FM)の人気モーニングワイド「J-WAVE TOKYO MORNING RADIO」内で、さまざまな企業が取り組んでいる「新しい働き方」から、これからの変化や未来を考える「RECRUIT THE WORK SHIFT」。本記事は、過去の放送の中から、「田代珈琲株式会社」の取り組みをご紹介します。

退職者が止まらない……。状況を改善させる田代珈琲の秘策とは?

現在、3代目の代表取締役社長を務める田代和弘さんが事業を引き継いだ1990年代半ば、「田代珈琲の経営は完全に行き詰まっていた」そうです。戦後の「喫茶店ブーム」に乗って、順調に伸びてきた業績に陰りが見えていたのにもかかわらず、昔ながらの働き方を変革できずにいたからでした。

同社の「働き方改革」は、定年退職していく社員を補充するための社員スタッフ増員からスタートしました。当時は、「採用したアルバイトの方を、徐々に社員に登用していったが、定着率が非常に低く、退職者が多かった。社長がどんなに頑張って働いても社員が退職してしまう」という状況でした。

そのころ田代さんは、退職者が出るたびに「これ以上社員が辞めていかないように、働くモチベーションを高めたい」ということばかりを考え、そのための取り組みに力を入れていました。

田代珈琲株式会社 代表取締役社長・田代和弘さん

そんなときです。田代さんはある書物で「モチベーションは他人が上げられるものではない」という趣旨の文章に出会います。これが田代さんの大きな“気付き”につながりました。

そもそも社長の自分でも社員のモチベーションを上げることなんて無理だと、考えていた田代さんです。どうせ社員のモチベーションを上げることができないのなら、「社員のモチベーションを下げないようにすればいいのではないか。モチベーションを下げてしまう環境を会社全体で改善すればいいのではないか」と発想を転換することにしたのです。

当時の主な退職理由は、「プライベートな時間が持てない」「職場の人間関係」「仕事にやりがいを見つけられない」の3つ。田代珈琲は、これら退職につながる理由を一つひとつ集中して改善していくことを目指します。そして、その目標を達成するために必要だったのが「就業規則」の改訂でした。

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改革は“就業規則の改訂”から始まった

社員の働くモチベーションを上げることはできないが、下げる要因を減らしていくことなら可能なのではないか……と発想の転換を図った田代珈琲。その後、整理されていなかった就業規則の改訂に着手するなど試行錯誤を繰り返し、働き方や労働環境の改善に取り組むことになります。そして、働き方、労働環境の改善に向き合えば向き合うほど、会社にとって良い方向に進んでいくことになると分かってきました。

労働環境を改善するためには、「少ない人数、少ない労働時間で多くの利益を上げること」=「社員の労働生産性を上げること」が肝要です。つまり、この働き方改革は、会社のためのものではなく、そこで働く人のためのものなのです。

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労働環境改善の具体的な取り組みとして、「残業ゼロ」「完全週休2日」「年次有給休暇取得」「業務マニュアルの確立」などがあり、その中に「1分単位の仕事計画」というものがあります。

田代さんによれば、「8時間労働を守ることを追及する中で、社員はいろいろな仕事を8時間でスケジューリングしていかないといけない。どう時間配分したらいいか、を考える中で、必然的に『1分単位でのスケジューリング』が出てきた」のだそうです。

社歴が長くなればなるほど仕事の種類は増え、仕事のできる社員ほどスケジュールは細分化されていくといいます。「何時何分までこれをやる」というふうに分刻みのスケジュールになっていくのです。

ここでの重要なポイントは、スケジュールをこなすときの意識。分単位で厳密にスケジュールを守るというよりは、仕事を「1分単位」で意識するということに、このスケジュール管理のポイントがあります。「1分間の仕事」の積み重ねが1日の仕事=8時間労働に、そして1週間の仕事=40時間労働につながっています。そしてそのような意識付けが、ひいては労働生産性の向上にもつながっていくのです。

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生産性の高い社員=お客さまを感動させる社員

社員の定着率を上げる→社員のモチベーションを下げる理由を減らす→社員の働き方にしっかり向き合う→会社に良いことがある……という「正のスパイラル」の存在に気付いた田代珈琲は、会社のためではなく、働く人のための“働き方改革”を進めてきました。

その改革を進めるために必要不可欠だったのが、「業務マニュアルの確立」です。同社の業務マニュアルは、「同一労働・同一賃金」という考え方を柱にしてつくられています。すべての業務は時間単価に対応し、仕事を覚えれば覚えるほど時間単価は上がっていくことになります(例えば、時給1,000円の人に、時給1,500円の人が担っている仕事を依頼することはできない、など)。

最終的には、仕事の最もできる人=マニュアルをつくる人、ということで、仕事に対する答えは社内にしかない、という状態になるのです。仕事を覚えれば覚えるほど時給が上がっていく「同一労働・同一賃金」が定着すれば、労働生産性はグッと高まるはずです。同社は、この予測を背景にして、社員の「付加価値」を高めることを目指しているようです。

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「有給休暇をきちんと消化するということは、経費として大きなコストがかかってきます。そのコストを吸収するためには『付加価値の高い社員』になってもらう必要があるということです」と田代さん。

「付加価値の高い社員」とは、「労働生産性の高い社員」です。そして、同社における労働生産性の高い社員とは、「お客さまを感動させる社員」だといいます。いろいろな場面でお客さまを感動させられることこそが付加価値。それが会社の利益になり、さらに変革につながっていきます。

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幸せは、自分の力でつかむもの

以前は退職する人が多かったという田代珈琲ですが、現在は、働き方改革に向き合う姿勢をもって採用をすることで、そこに共感してきてくれる人が中心となっており、同じ価値観の人が集まってきているとか。

田代さんは以前、「自分が社員を幸せにする!」と思っていましたが、「現実的には経営者が社員を幸せにすることはできない。幸せをつかむことができるのは、社員自らの力によってでしかない」ことが分かり、現在は、社員自身が幸せをつかめるようにサポートするための環境づくりに、最大限努力しているそうです。

仕事を1分単位でスケジューリングしているのもそのためで、スケジュールに応じて給料も1分単位で計算しているとのこと。「仕事をすることで、有意義で充実した8時間を過ごしてもらう」ことが目的です。

最後に田代珈琲の今後の展望について伺うと、「これまでの働き方改革で、ある程度ゴールをクリアしてきたので、この取り組みを強みにしていきたい。いい職場環境をより充実させて、田代珈琲で働きたい!という人を増やしていきたいですね」と語っていただきました。

田代珈琲株式会社の取り組みから導き出す「WORK SHIFT」のヒントは・・・『職場環境をより良く充実させて生産性をアップ!』でした。

小さな会社だから難しい、中小企業だから難しい、と諦めることなく、社員の働き方にしっかりと向き合う。「会社にとっての働き方改革ではなく、働く人のための働き方改革に取り組んでいるんだ」という意識に立ち戻ることが大切なんですね。

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■「RECRUIT THE WORK SHIFT」バックナンバー

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