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業務改善を“実践”するために、沢渡あまねさんが伝えたいこと

大手自動車メーカー、システムインテグレーター、製薬会社を経て、2014年からITやコミュニケーションにまつわる組織改革に携わってきた、作家であり、ワークスタイル専門家の沢渡あまね(さわたり・あまね)さん。

そんな沢渡さんに、350を超える企業・自治体・官公庁の働き方や組織変革に関するアドバイザーを担当してきた経験から、変わらない組織を変える“最初の一歩”について伺いました。

J-WAVE(81.3FM)の人気モーニングワイド「J-WAVE TOKYO MORNING RADIO」内で、さまざまな企業や個人が取り組んでいる「働き方」から、これからの変化や未来を考える「RECRUIT THE WORK SHIFT」。1日のスタートに「新しい働き方」のヒントをシェアしています。本記事では、過去の放送の中から、沢渡あまねさんの回をご紹介します。

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沢渡あまねさん

業務改善を“掛け声”だけにしないために

沢渡さんが最初に指摘するのは、改善を掲げる多くの組織でよくみられるという“掛け声だけの業務改善”。

会社のトップや人事部門は業務改善をしたいと考えているけれど、「現場から改善提案が出てこない!」「誰も本音を言ってくれない!」とし、現場では「どうせまた掛け声だけで終わる」「改善提案しても、評価されない」との声がある。
そんな思いがあるために、掛け声だけの業務改善で終わってしまうことが多いとか。お互いが“相互他人事”になってしまうと、業務改善は“掛け声だけ”になってしまうようです。

社内の気運を高め、業務改善を定着させるために、沢渡さんは3つのポイントを挙げてくれました。

① みんなにメリットがある共通のゴールを示す
「週休3日にして、給与や待遇も良くする」「月に1〜2回、会社がお金を出してリゾートホテルからでも仕事ができるようにする」など、このようなゴールを設定することによって、「今のやり方を変えてみようかな?」と、みんなが取り組む気になる。

② 立場、部署が違う人たちの期待と役割を言語化して明確にする
社長や部長、課長、人事部門、IT部門など、立場や部署が違う人たちが「これをやる」「こう変わる」「こう成長する」ということを言語化して設計していく必要がある。

③ 育成する、評価する
例えば、業務改善をするために必要な環境を整える、研修をやってみる。業務改善をしている組織を正しく評価する。逆に、業務改善に非協力的な人たちには厳しい処遇をすることも必要。

こういったサイクルがうまくいくと、働く人たちの成長実感も高まり、仕事に対する誇りや会社に対するエンゲージメントも高まる、ポジティブな組織への一歩が踏み出せるということです。

「オープン型」の働き方という提案

“掛け声だけの業務改善”など、変わらない組織がまだまだ多い背景には、自分たちが時代の変化の過渡期にいることを認識していない、自分たちの組織がこれまでの働き方に縛られていることを理解していない、そんな実情もありそうです。

この時代の変化について沢渡さんは、「これまでの働き方は、あらゆることが“統制型”で最適化されてきたんです」と言います。
就業時間、定められた場所で間違いのない作業。そのための人事制度や労務環境。コミュニケーションは報連相、情報共有はクローズで…。こういった“統制型”が全て悪いわけではもちろんないということですが、「そのままでいいのか?」「状況に応じて使い分けていく必要はないのか?」と、考えることが大事だということです。

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そんなときのヒントになるのが、沢渡さんが提案する「オープン型」の組織体制やマネジメント。地球環境も変化し、新型コロナウイルスのような未知のリスクも顕在化している、人の働き方や価値観も変化している今は、組織の中に答えがない時代。組織外の人と素早く、オープンにつながって答えを出していく必要があるということです。

同じ組織内でも立場を超えて、部署の壁を越えて、あるいは社外の専門家、消費者ともオープンに素早くコミュニケーション、コラボレーションができるか? 変わらない組織を変えるヒントは、組織の外にあるのかもしれません。

仕事と一口に言っても、「統制型」の働き方の方が効果的な仕事もあれば、「オープン型」の働き方の方が、結果を出しやすい仕事もあると沢渡さんは考えます。
「統制型」の働き方に向いているのは“オペレーション”、繰り返し性のある定型的な作業です。「オープン型」に向いているのは“クリエイション”、何か新しいものを生んでいく作業、企画する、開発するなどの仕事。それぞれ等しく大事な仕事ですが、クリエイティブな仕事では、勝ちパターンが違うと言います。発想、思考、成長を生み出しやすくしていく必要があり、それは固定的な環境では生まれにくい。組織の外ともつながっていく「オープン型」になっていくことが、クリエイティブな組織には必要だということです。

さらに、トップダウンではなく、コラボレーション。失敗を許さないのではなく、トライ&エラーが評価される。コミュニケーションは“報連相”ではなく、雑談と相談でつながる“雑相(ザッソウ)型”。クリエイティブな人材、組織を目指すのであれば、こういった環境にも目を向ける必要がありそうです。

環境という意味ではリモートワークの導入など、変化はすでに始まっているところも多いですが、そこで生まれる“格差”について、沢渡さんはこう考えます。
「働き方の変化の中で、リモートワークができない現場から不公平感が起こる場合がありますが、その考え方は捨てた方がいいと思います。社内の不公平感より、世の中の同じ職種との不公平感を重視した方がいい。世の中との不公平感を正すことは、その職種のプロとして成長を促すことであり、結果的に組織のチカラの強化につながるんです」

平日・都市型ワーケーションとは?

そんなリモートワークの次の働き方として、沢渡さんが注目しているのが、「平日・都市型ワーケーション」。

「ワーク」と「バケーション」を組み合わせた「ワーケーション」ですが、これまでの「ワーケーション」は観光地やリゾート地でリモートワークをするというものでした。
これに対して「平日・都市型ワーケーション」は、長時間の移動を伴う場所ではなく、都市の近郊で平日に移動し、オフィスや自宅では得られない発想やコラボレーションを生んでいくというもの。長距離移動を伴わないため、企業側のコスト面だけでなく、新型コロナウイルス感染症のリスク面、従業員の心理的負担などの問題も少なくなりそうです。

「平日・都市型ワーケーション」のように、これまでにない働き方を進めていくには企業側の変化も必要ですが、最後に、アフターコロナに向けた働き方についても伺うと、「とにかくデジタルワークシフトです。リモートワークもワーケーションもそうですが、例えば、印刷する、ハンコを押す、郵送する、受け取る、FAXする。こういった業務が発生した時点で、場所にとらわれない働き方は成り立たない。経理や総務、紙や郵送の手続きが多い部署ほど率先してリモートワークをしてみて、ニューノーマルを阻害するものをなくしていく取り組みをしていくことが必要だと思います」


ワークスタイル専門家の沢渡あまねさんのお話から番組が導き出した「WORK SHIFT」のヒントは・・・『オープン型で組織の外ともつながるチャレンジを評価していこう!』でした。

組織の中に答えがあるとは限らない時代。さまざまなつながりを生むチャレンジやワークスタイルを受け入れ、評価する。それが変わらない組織を変える“最初の一歩”になりそうです。

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■「RECRUIT THE WORK SHIFT」バックナンバー

世の中のイノベーティブな「働き方」を朝の時間にお届け!『RECRUIT THE WORK SHIFT』(J-WAVE 81.3FM)は月曜日から木曜日まで、毎朝6:15ごろよりオンエア中です。
▼J-WAVE番組サイトはこちら
https://www.j-wave.co.jp/original/tmr/quote/index.html
▼これまでの記事はこちら
https://antenna.jp/articles/5248566


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