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キャリアの「孤立」から「共助」へ。今必要なのは企業アルムナイと非営利の仕事――リクルートワークス研究所

人生100年時代は、「仕事がなくなるかもしれない」という懸念につきまとわれる時代でもあります。雇用の流動化により、自助努力によるキャリア形成が重視されるようになっていますが、キャリアを切り開くのに大切なのは「人とのつながり」である、という研究結果が出ているそうです。

J-WAVE(81.3FM)の人気モーニングワイド「J-WAVE TOKYO MORNING RADIO」内で、さまざまな企業が取り組んでいる「働き方」から、これからの変化や未来を考える「RECRUIT THE WORK SHIFT」。1日のスタートに「新しい働き方」のヒントをシェアしています。本記事は、過去の放送の中から、今必要な新しい「働き方」について「リクルートワークス研究所」の中村天江さんに伺ったお話をご紹介します。

家族とも職場とも違う第3のつながりを創るために

リクルートワークス研究所が、日本・アメリカ・フランス・デンマーク・中国の5カ国で行った2020年の調査で、日本は他国と比べて「人間関係が少なく・質も伴っていない」ことが明らかになりました。交流のある人間関係の平均が、アメリカでは6.4種類であるのに対して、日本は4.6種類。

日本人は「つながりの危機」に陥っているのだそうです。AIの普及によって仕事が失われ、会社との関係が途切れることもある。しかも高齢化や非婚化によって単身世帯も増えている。これからは「家庭」と「職場」という2大・人間関係があることが、当たり前ではない時代になっていくといいます。そうした状況で長い人生を幸せに生きていくには、人とのつながりをどう創るのかが問われます。

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しかも、人とのつながりは、どのようなものでもいいのではなく、大切なポイントが2点。

〇 ありのままの自分でいられる
〇 共通の目的がある

ありのままの自分でいられて、共通の目的がある人間関係が、人生の中で、喜び・成長・エネルギーをくれることが、リクルートワークス研究所の分析で分かったそうです。

さらに外交的な性格でなくても、人間関係を創れる方法も同研究所は明らかにしています。その方法とは、以下の「4つのスモールステップ」。

① 自分を伝える
② 自分を振り返る
③ ちょっとした手助けをする
④ 助言を求める

4つのスモールステップを使って、家族でも職場でもない第3の「人とつながり」を創ってほしいと、中村さんは語ります。

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出所:リクルートワークス研究所(2020)「マルチリレーション社会」

共通の目的を持つ“サードプレイス”としての「キャリアの共助」

終身雇用がもはや当たり前ではなく、仕事を移りながらキャリアを築いていくのが一般的になりつつある現在、私たちはこれから、どのようにキャリアを築いていくのが良いのでしょうか。

リクルートワークス研究所の調査により、働く人のおよそ4割が、転職や独立などの「キャリアの挑戦」をあきらめているという実態が明らかになりました。

日本では「キャリアの自立」ではなく、「キャリアの孤立」が起きているのです。日本では、アメリカやフランスと比べると「周囲の人からキャリアの後押しをしてもらう」人が、約3分の1。雇用が流動化している国では、周囲の人たちや社会システムの中に「キャリアを支え合う・後押ししてくれるもの」が、さまざまな形であるそうです。しかし、日本ではそうした仕組みなどが乏しく、会社との雇用関係が揺らぐと、個人は自助努力でキャリアを築かなければならない状態になるのです。

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では、個人がキャリアを築いていくために必要なもの、キャリアを支え合い、後押ししてくれるものとは、何なのでしょうか。

中村さんによると、それは「キャリアの共助」。例えば、労働組合や、会社のOB/OGのアルムナイ(同窓組織)など、仲間と一緒にキャリアを築くことができるものです。日本では労働組合の組織率は17%まで低下していますが、アメリカでは近年、支持率が上がっており、アルファベット(グーグルの親会社)で今年、労働組合が成立したことも大きな注目を集めています。

こうした労働組合やアルムナイ、県人会などは、仕事のオンライン化が進むことによって、若い世代の人たちが積極的に参加するコミュニティーに生まれ変わっているとのこと。家族とも会社とも違う、共通の目的がある“サードプレイス”として「キャリアの共助」を探してみてはどうか、とリクルートワークス研究所は提案しています。

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出所:リクルートワークス研究所(2021)「つながりのキャリア論 ―希望を叶える6つの共助―」

日本企業で導入相次ぐ「企業アルムナイ」

現在、働いている人の約7割が「一度は仕事を辞めた経験がある」そうです(リクルートワークス研究所「全国就業実態パネル調査2020」)。そんな「会社を辞めることがある」ことを前提に、充実した人生を歩むには、以前とは変わり始めていることがあると、中村さんは言います。

以前は、会社を辞めた人は「裏切者」または「落ちこぼれた人」という印象がありましたが、現在では「仕事は辞めても仲間である」という意識に変わっているとか。「アルムナイ」は、「同窓生・卒業生」の意味から転じて「離職・退職者やOB/OGの集まり」という意味で使われており、外資系の企業では以前から存在していました。現在では、日本国内の大企業も企業アルムナイを設けるようになっているそうです。

日本企業が相次いで企業アルムナイを導入するようになった背景の1つ目は、「自社を辞めた人ほど、ビジネスパートナーとして最適な人はいない」ということに気付いたこと。

そして2つ目は、「自社を辞めた人は、組織の外にいるが、広い意味での仲間」という意識に変わったこと。中村さんによると、2019年は日本で新規求人の充足が過去最低レベルだったといいます。実はコロナ禍の今も、人材不足に苦労している企業は少なくありません。そんな企業にとって、自社を辞めた人は、本人と企業のタイミングが合えば、活躍してくれる可能性がある人材というわけです。

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日本の地方創生の鍵となる「非営利の仕事」

最後に、コロナ禍によって再び注目を集めているテーマの一つである、「東京への一極集中」について伺いました。

人材が地方から都市部へ流入してしまうというのは、20~30年にわたって続く、なかなか解決しない問題でしたが、コロナ禍の中でテレワークの浸透もあり、地方で働くことを選択する人が増えつつあります。しかし、そのときにとても大きな問題があると、中村さんは指摘します。

それは、「地方に魅力的な仕事がない」こと。OECDの2018年の調査で、「日本の地域での仕事創出力は0%」、つまり、首都圏だけで新しい仕事を生み出している、という結果が出ました。一方、最も地域で仕事を創出できているのはアメリカ。就業構造において、アメリカが日本と違うのは、「非営利セクター」の就業者数が多いことです。地域に雇用創出力がある国の特徴として、営利企業だけではなく、NPOのような非営利セクターの仕事も多く存在し、地域に雇用や勤務先を生み出していることがあるそうです。

日本では現在、そうした非営利セクターの仕事は、2つの点で大きな転換期にあるそう。

1つ目は、2020年12月に成立した「労働者協同組合法」です。同法によって、企業に雇用されるのでも自営業として働くのでもなく、働く人たちが自ら出資して経営者となり自ら事業運営をして、さらに労働者としても働くという「第3の働き方」が可能になりました。今、整備されつつある「協同労働」という働き方は、地方での新しい働き方として注目されています。

2つ目は、非営利セクターの中でもNPOの数がまだまだ足りず、いまの10倍は必要だということ。中村さんは、日本の地域での新しい仕事の生み出し方は「非営利セクター」にこそ突破口がある、といいます。

図3

出所:M. Salamon(2018)“Nonprofits: America's Third Largest Workforce”, Nonprofit Economic Data Bulletin #46

リクルートワークス研究所・中村天江さんのお話から導き出す「WORK SHIFT」のヒントは・・・『キャリアの「孤立」から「共助」へ。今必要なのは企業アルムナイと非営利の仕事』でした。

新しい働き方の選択肢、増えています。

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■「RECRUIT THE WORK SHIFT」バックナンバー

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