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誰もが、良いところを生かせる働き方を!――ディンク株式会社

大阪府にあるディンク株式会社は1993年に創業。段ボール用インキを製造する会社としてスタートしました。その後、お客さまのニーズに応えるかたちで、主力事業を排水処理設備の設計から施工・販売にシフト。現在は、排水処理を専門に手がけています。

J-WAVE(81.3FM)の人気モーニングワイド「J-WAVE TOKYO MORNING RADIO」内で、さまざまな企業が取り組んでいる「新しい働き方」から、これからの変化や未来を考える「RECRUIT THE WORK SHIFT」。本記事は、過去の放送の中から、「ディンク株式会社」の取り組みをご紹介します。

お互いの良いところを生かし合いながら仕事をする

父親の跡を継いで、2代目の代表取締役社長を務める礒部薫さんは、大学の船舶工学科を卒業後、地域情報誌などを制作する会社に勤務。結婚して3人の子育ての最中だった2005年、ディンクに後継者がいないことから将来は2代目を継ぐ覚悟で、取締役として入社しました。

しかし入社してみると、当時の労働環境は過酷でした。例えば、排水処理設備の設置工事はお客さまの工場が操業を止めている時期にしか実施できないため、どうしても土日・ゴールデンウィーク・盆休みなどの休日・祝日を使って納入することになります。しかも、現場は昔ながらの長時間労働。「平日に休むなんてとんでもない!」という考え方が当たり前でもありました。

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ディンク株式会社 代表取締役社長・礒部薫さん

磯部さんは2013年に社長に就任すると、次々に「働き方改革」を進めますが、根強い「男社会」の中でかなりの苦労を強いられます。現場入りを希望する磯部さんに対し、「女性だし社長だし、今さら現場に入らなくても……」と、現場が認めてくれなかったのです。

それが3年前、半泣きになるぐらい感情を露わにして、「自分が現場を知れば、自ら社員を育てることができるようになる。会社にとって絶対にプラスになる」と訴えたことが、現場の人たちの心を動かし、磯部さんは現場入りします。現場に入るにあたり、磯部さんは電気工事士の資格を取得、設備部の責任者によると「今では、なくてはならない存在になった」といいます。

「今は電動工具も良くなっているし、労災の面でも危険を回避する対策を取るのが当たり前。性別を問わずできる仕事がたくさんあります。互いの良いところを生かし合いながら仕事ができたらいいですね」

さまざまな背景を持った社員が良いところを引き出し合いながら働く。ディンクは、まさに多様性が生かされた会社になったのです。

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目の前のこと一つひとつ向き合うことが、意識改革につながる

2013年、2代目社長に就任した礒部さんがまず手がけたのは、就業規則の改定でした。

「当時の就業規則は何十年も前に作ったもので、きちんと整理されてはいませんでした。給与やボーナス・手当も、前社長である父の一存で決まっていました。それが、私の社長就任とともに、“それでは社員も困るだろうから就業規則に書いていこう”ということになりました。就業規則は一見、社員のために存在するもののように受け取られますが、労働基準法に即しており、会社が守るべき基準が明確になります。社員のためだけでなく、会社にとっても必要なものなんです。互いに就業規則によって守られているんですね」

磯部さんによると、就業規則を改定する際、“社員からの反発はなかった”といいます。「私のやっていることは社員のため」という磯部さんの働く姿勢が認められていたからだそうです。

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このようにして、少しずつ進められていったディンクの「働き方改革」。進めていくにつれて、社員の意識も徐々に変わっていきます。

「振り返ってみると、『あのときやったことが、いま生きてきているよね』ということが、たくさんあるんです。例えば就業規則にしても、振替休日を明文化したことで、大手を振って休みを取れるようになりました。最初は、“本当に休んでいいんですか?”と社員に言われましたよ(笑)。そんなとき私は、“自分が休んだ日でも現場が回るように、仕事の算段だけはしておいてね”と言いました。そして、“あとは本人の仕事の力量に合わせて調整すればいい”、と」

「結局、評価するのは社長の私ではなく、周囲なんですよね。周りがどう評価するか考えて行動しないと、制度だってうまく使いこなせない。意識改革をするといっても、会社も社員もやることは目の前のこと一つひとつなんです」

「会社は就業規則に則って、きちんと手当を支払うことが大事。一方で、社員の方も、ダラダラと働くのではなく、就業時間内にきちんと仕事を終えるようにすることが大事。こういうことを続けていると、結局、社員も定時で帰るようになるんです」

意識改革は目の前のこと一つひとつとじっくりと向き合って、会社そして社員同士で話し合って実行する。評価は社長だけではなく周りと行い、自分の働き方を照らし合わせていく。そんな基本姿勢こそが、ディンクの社員の意識を少しずつ変えていったのです。

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ITツール導入で気付いた情報共有の大切さ

ディンクが取り組んだ改革の一つに、手書きで記入していたタイムカードのデジタル化があります。就業時間を管理するITツールを導入して、社員の労働時間を「見える化」することで、上司は部下の就業時間をしっかりと把握できるようになり、部下も有給の取得や、残業は申請して許可をもらってから行うという手順が明確になりました。さらに、“その時間、自分は何をやっているのか”がオープンになったことで、仕事に対する時間の意識が変わり、労働生産性が改善されたのです。そして、そのような取り組みを続ける中で、会社も社員たちも、情報を共有することの大切さに気付き始め、それが2つ目のIT化につながっていきます。

「情報を共有することで、いかにメリットが出るかが分かったので、次は手書きだった日報をデジタル化することにしました。日報そのものはもちろん、コメントもすべてオープンです。日報のコメントは説教などではなく、“それ、いいね”という気付きだったり、“そこ困っているんだったら今度話し合おうか?”という助言を残したりしようと思ったんですね。社員といろいろな気付きを共有できればいいな、と思って。今では、全員がそれぞれの日報を見ており、個々の働いている状況が分かるようになりました」

さらに、3つ目のIT化として、チャットツール「Slack」を導入。これを使うことにより、さらに情報共有が進んだそうです。ITツールを活用して情報を共有することは、お互いの仕事を理解し、お互いに助け合える環境づくりにもつながるんですね。

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ディンクの「適材適所」の考え方

社員が生き生きと働ける職場を目指し、「適材適所」を見出すことを目標にするディンク。実際のところ、どの程度目標が達成されているのでしょうか。磯部さんが語ります。

「これに関しては、いつまで経っても完成はしないですね。年齢や能力の伸びによって、社員の配置転換をしていかないといけないんですが、そのときそのときにマッチする人を配置していかないと……。難しいのは、配置した側である会社の思う“適材適所”と、配置された側の社員の思う“適材適所”が異なっていた場合、その感覚のズレをどう埋めるか、ということなんです」

「大切なのは、マイナス面を見ないこと。“これはできるけど、こっちはうまくできない”といった人でも、“あなたの長所はここだよ”とメッセージを発し続けるなどして、なるべく良いところを伸ばして、できないところは他の人がカバーする。それくらいの“適材適所”でいいのではないか、と思います」

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来年春には、高校を卒業したばかりの新人2人とインドネシアからの留学生1人(うち女性2人)が入社予定だというディンク。“適材適所”の考えは、新入社員の採用の面でも会社にいろいろな変化を生んでいるようですが、一方でいまだに試行錯誤する点もあるそうです。磯部さんが続けます。

「女性にしか、女性のしんどさは分からないんです。夫婦共働きでも、子どもが熱を出したときに実際に休みを取るのは女性の方が多く、(休むことで)職場や子どもに対する後ろめたさを覚えたり、みんなに対して申し訳ないと思ったりしながら働く気持ちは、休んだ当人でないと分からない。だから世の中に、そういう人たちの気持ちが分かる女性経営者・働く人がもっと増えなきゃいけないと思うし、男性にも子育てをして女性の気持ちを理解してほしい。子育てを丸投げして、働くだけ働いてきたから子どもとのコミュニケーションが苦手になっているお父さんなんかもたくさんいる中でも、性別を問わずお互いに得意なところ、『いいとこどり』ができるようになればいいですよね!」

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ディンク株式会社の取り組みから導き出す「WORK SHIFT」のヒントは・・・『誰もが、良いところを生かせる働き方を!』でした。

性別を問わず、お互いの良いところを生かしながら仕事ができるように、それぞれの現実に向き合いながらコミュニケーションを重ねる努力をする。そんな職場環境ができたら最高ですね。

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■「RECRUIT THE WORK SHIFT」バックナンバー

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