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デジタルを駆使して、働き方改革をアップデートしていく――清水建設

清水建設株式会社は、東京都中央区に本社を構える、大手総合建設会社。国内外に事業拠点を持ち、従業員はおよそ1万人です。同社では、以前から従業員の働きがいを高めるための取り組みを行っており、「働きがい指標」という独自の視点を採り入れた改革を進めてきたといいます。その「働きがい指標」という考え方について、同社執行役員設計本部・副本部長の藤本裕之さんにお話を伺いました。

J-WAVE(81.3FM)の人気モーニングワイド「J-WAVE TOKYO MORNING RADIO」内で、さまざまな企業が取り組んでいる「新しい働き方」から、これからの変化や未来を考える「RECRUIT THE WORK SHIFT」。本記事は、過去の放送の中から、「清水建設株式会社」の取り組みをご紹介します。

アフターコロナを見据えた働き方の変革へ

「以前より、働きがいを高めるための取り組みを全社的に進めようという気運が高まっており、さまざまな活動が各部門でスタートしていました。この流れの中で、2019年の中期経営計画において、『働きがい指標』という、働きがいを計る指標を採り入れた“働き方改革”を打ち出したのです。これは、非常に重要な取り組みの一つでした」

清水建設の働き方改革のきっかけとなっているのは、2019年の中期経営計画で設定した「働きがい指標」です。「働きがい指標」とは、毎年全従業員に、「仕事のやりがい」「職場の信頼関係」「心身の健康」などの数十項目について、それぞれ5点満点で評価してもらい、平均値を出したもの。

部門や職種、職位、さらには家庭環境などによって多様な働く環境がある中で、どのような施策が必要なのかなどについて従業員間で共有し、各職場でさまざまな工夫を重ねることが重要だと考えています。清水建設は、2030年度までに働きがいを評価する主要な3つの指標を4.0以上にすることを目指しています。

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清水建設株式会社 執行役員兼設計本部・副本部長の藤本裕之さん

もともと清水建設は、時短勤務、フレックス勤務、在宅勤務などの勤務形態だけでなく、一人ひとりの働きがいを高めることが働き方改革の本質だと考えていました。その考え方は、新型コロナウイルスの感染拡大によって一気に加速したといいます。

コロナ禍に突入してすぐに、同社は全社的にテレワークを導入。それに伴い、従業員の勤務形態は多様化しましたが、同時に、従業員同士のコミュニケーションが取りにくい、仕事とプライベートの切り替えが難しいなどのさまざまな課題も生じてしまいました。その際に、単に課題を解決するだけでなく、アフターコロナを見据えた働き方の変革にもつなげるように、と社長から提案があったのです。

その提案をきっかけに、同社本社ビルを実証実験の場として、さらなる改革に本格的に取り組むことになりました。期限は2021年5月のゴールデンウィーク。関係部署で、集中的に議論しながら進めたそうです。

「SHIMIZ CREATIVE FIELD」という働き方

清水建設では、アフターコロナを見据えた働き方改革の取り組みの一つとして、時間と場所を選ばない新しい働き方「SHIMIZ CREATIVE FIELD」を立ち上げました。この働き方について、藤本さんは次のように話します。

「2021年5月に立ち上げた『SHIMIZ CREATIVE FIELD』は、サテライトオフィス、リモートワークを含めた、新しい働く場所のことです。本社のオフィスレイアウトをデジタルの三次元空間に展開、社員のいる場所を顔写真付きのマークで表示します。インターネットで、仕事場が一つの空間としてつながるという考え方です。これは、天井のセンサーが、社員一人ひとりが所有する500円玉ほどの大きさのタグを読み取ることで可能になります」

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このシステムは、測位精度が高く、いま、誰が、どこの座席にいるのかということまで分かるとのこと。画面に映し出された顔写真をクリックすると社員の携帯番号とメールアドレスを表示、そのまま直接連絡できる利便性の高さも備えています。社員からは、事前に社員のいる場所を確認できるため、声をかけやすくなったと好評だそうです。

藤本さんはこの「SHIMIZ CREATIVE FIELD」の長所の一つとして、デジタル空間での「ほどよい解像度」を挙げています。

「テレビカメラで監視しているわけではないので、一人ひとりが何をしているかまでは分かりません。プライバシーが守られていることが、社員たちに受け入れられている要因だと考えています」

「SHIMIZ CREATIVE FIELD」は現在、本社オフィスの2フロアのみで稼働していますが、今後は設計部門への展開も検討中だということです。

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コミュニケーション量を可視化していく

清水建設は「SHIMIZ CREATIVE FIELD」を用い、単に社員の居場所を可視化するだけでなく、その導線履歴もデータ化し、蓄積することによって、社員同士のコミュニケーションの総量を可視化していこうと考えています。藤本さんはこう話します。

「『SHIMIZ CREATIVE FIELD』のシステム面の特徴は、測位精度の高さです。画面が80センチ四方のグリッドで区切られており、社員がどの座席に長く滞在していたのかは、グリッドのメッシュの濃淡で表示されます。ですから画面を一目見れば、ソロワーク用の席や大型モニターの設置されている席、ソファ席などの中で人気不人気なのが明瞭で、どの席が不足しているのか、あるいは余分なのかが分かってきます。当社は可動式のオフィス用具を採用しています。ですから、『SHIMIZ CREATIVE FIELD』のシステムデータを参考にオフィスのレイアウトを変更することで、社員たちの仕事のパフォーマンスの向上を図ることができるのです」

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他の活用事例も広がっているそうです。例えば20代と30代の社員が15分以上同じ場所に滞在していれば、会議、もしくは打ち合わせをしているのではないかと推測でき、そこからおおよそのコミュニケーションの総量を導き出すこともできます。

同社は、それぞれの社員が持っている情報や意見をフィードバックすることは大切なことであり、そこにこそ出社する意義があると考えています。『SHIMIZ CREATIVE FIELD』を用いてのコミュニケーション総量を可視化させ、データ分析することは、Face to Faceの会議や打ち合わせを一層充実させることにもつなげられるといいます。

これから先、オフィス内の移動総量を年齢別に可視化するなどして、業務改善や働き方の改革にも役立てていくとのことでした。

これからの「SHIMIZ CREATIVE FIELD」

最後に、SHIMIZ CREATIVE FIELDの成果と今後について、藤本さんに伺いました。

「社員はSHIMIZ CREATIVE FIELDという環境に徐々に慣れてきました。成果としては、声かけがしやすくなった、コミュニケーションが可視化されたことで行動を意識するようになったという意見が挙がっています。今、緊急事態宣言解除になって、出社率が戻ってきています。コロナ禍以前の、平常状態の出社率でどうなるのか、出社とリモートのハイブリッドワークで、どういうふうに出社をコントロールするのか、焦ることなく考えていきたい」

働き方改革はすぐに結果が出るものではない。従業員の理解を得ながら一つずつ進めていきたいとのことでした。

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清水建設の働き方改革から導き出す「WORK SHIFT」のヒントは・・・『働き方をデジタルで見える化することが、改革の可能性を大きく広げる』でした。

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■「RECRUIT THE WORK SHIFT」バックナンバー

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