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業界の常識を見直し、働き方を選ぶ仕組みが、業績を大きく伸ばす――朝日通商

社員自らが「働き方」を選ぶことで、さまざまな課題を解決した株式会社朝日通商は、1970年設立の運送会社。香川県高松市に本社を構え、従業員はおよそ340人です。

J-WAVE(81.3FM)の人気モーニングワイド「J-WAVE TOKYO MORNING RADIO」内で、さまざまな企業が取り組んでいる「新しい働き方」から、これからの変化や未来を考える「RECRUIT THE WORK SHIFT」。本記事は、過去の放送の中から、「株式会社朝日通商」の取り組みをご紹介します。

「リレー輸送」は、なぜ成功したのか

代表取締役社長・後藤耕司さんによると、新卒採用のために訪れた高校で聞いた話が、朝日通商が働き方改革に取り組むきっかけになったといいます。就職担当の教諭によると、今の若い人が考える仕事の条件は、「毎日家に帰れること」「残業がないこと」「年間休日が100日以上あること」の3つ。自分が何になりたいかではなく、労働条件で仕事を決めているそうです。しかし、今から4〜5年前の朝日通商には、若い人が考える仕事の条件が3つとも当てはまらなかったため、業界の地位を向上させるためにも働き方を変えなくてはいけないと考え、改革に着手しました。

まず取り組んだのは、ドライバーの長時間勤務の解消でした。従来は、香川県から関東までの700〜800キロを1人のドライバーが10時間かけて運転、荷物の積み下ろしも行っていました。現状、法律で許された拘束時間は、1日平均9時間。法律を守るためには、なんとかしてドライバーの勤務時間を短縮する必要があります。そこで取り入れたのが「リレー輸送」でした。4人のドライバーを2人ずつ二組に分け、香川県方面と東京方面の両方からそれぞれ1台ずつトラックをスタートさせ、中間点の滋賀県で互いに車を乗り換え、1日でそれぞれの出発地に戻るという運行方式です。荷物の積み下ろしは別のスタッフが行います。

法律やコストの問題をクリアしながら、働き方改革を実現する仕組みが、長時間労働が避けられなかった業界の常識を覆していったのです。

後藤社長
株式会社朝日通商 代表取締役社長・後藤耕司さん

コストダウンしたのに休みが増えた!?

トラックの長距離輸送を4人で担当する「リレー輸送」で、長時間勤務の問題に取り組んだ朝日通商。その効果は、主に「女性ドライバーの雇用」や「コスト構造の改善と収益力のアップ」に現れているそうです。一体なぜ、そのような効果が得られるようになったのでしょうか。

後藤さんによると、「『リレー輸送』では、そこに携わるドライバー4人のうち2人はトラックの運転だけを担当する」とのこと。勤務時間は夜の7時から朝5時の9時間で、荷物の積み下ろし作業がないこともあり、「大型免許があり、運転に慣れていて、安全意識が高い人であれば、女性が担当することも可能になった」のだそうです。現在、朝日通商では、女性が3人ほどドライバーとして働いています。

「リレー輸送」を導入すると、ドライバーが1人から4人に増えることでコストはかかりますが、トラックをフル稼働させられることで、トラックの回転率は大幅に向上することになりました。しかも、四国から関東、関東から四国、それぞれの運搬時に+αで仕事を増やすことができれば、ドライバー1人で走っていたときよりも、さらに収益力を上げられる。これも、「リレー輸送」の効果といえます。

また、朝日通商は、この「リレー輸送」に加えて、「シャトル便」という輸送方式も設けました。香川県から関西エリアを日帰りで往復することで、車の回転率が2倍になるという方式です。この方式の導入でコストダウンと、ドライバーの週休2日を実現することができました。「リレー輸送」と「シャトル便」。2つの輸送方式が、ドライバーの働き方を大きく変えたのです。

トラック (1)

日報のデジタル化でエンゲージメント向上

「リレー輸送」と「シャトル便」という2つの輸送方式を採用した朝日通商。ドライバーは仕事のスタイルに合わせ、働き方を選べるようになりました。後藤社長によると、「ドライバーの働き方に対する考え方は2種類ある」と言います。

昔ながらのドライバーはできるだけ長く運転して、収入を上げたいと考えます。そのようなドライバーにとってのリレー輸送は、“仕事が楽になるけど稼げない”方式でしかなく、ニーズには合いません。一方で、最近の若手ドライバーの多くは“毎日家に帰りたい=仕事以外の自分の時間を持ちたい”と考える人が多い。そういうドライバーにとって長時間勤務は、厳しいものになります。しかし、現在では、2つの輸送方式がそろったことで、より自分に合った働き方を選ぶことができるようになりました。

一方、事務職の働き方もITを取り入れることで大きく変化しました。日報のデジタル化も、事務職の働き方を変えたものの一つです。コミュニケーションツールを使った日報に必要な要素は、1日の業務内容、お客さまに喜んでいただけたこと、職場の仲間に喜んでもらえたこと、今日気付いたことの4つ。グループごとに共有し、上司がコメントを返します。まさに上司と部下の交換日記の役割を果たしていて、エンゲージメントの向上に役立っているということです。業務上のことに限定しないコミュニケーションが、グループの目的意識を高めたのです。

オフィス写真

仕事はお客さまに価値と感動を提供するもの

朝日通商は、業界の常識を覆す輸送方式を採用することで、ドライバーの働き方を変えました。現在は、「タブレットを使って道案内と仕事のガイドが可能なシステムを開発中。新人でも安全と品質の担保ができるシステムを目指している」ということ。

さらに、リレー輸送などの新しい輸送システムは、業務の幅も大きく広げることにつながっているようです。例えば、これまで難しかった鮮度の高い野菜を少量でも東京に届けられるようになったのは、柔軟性の高いリレー輸送の成果です。朝日通商は、自らの仕事をお客さまの販売支援業と捉えていますが、その姿勢が新しいサービスの開発につながっていったのです。

後藤社長は、「会社は社員を幸せにするところだ」と考えています。仕事はお客さまに価値と感動を提供するもの。そのためには、自分が言ったことはとにかく実行する。例えば、週休2日制であれば、どうやったら実現できるかと先に頭で考えるのではなく、まずはやってみる。「アジャイル型開発技法」ではありませんが、走りながら考える、そんな社風に変えていきたいのだそうです。「変わらなければ、これからの時代、生き残ってはいけない」ともお話になりました。


株式会社朝日通商の取り組みから導き出す「WORK SHIFT」のヒントは・・・『業界の常識を見直し、働き方を選ぶ仕組みが、業績を大きく伸ばす』でした。

「当たり前」だった働き方を「過去」のことにする。そんな取り組みが求められています。

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■「RECRUIT THE WORK SHIFT」バックナンバー

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