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社外活動の機会を通じて心から熱中できるテーマとの出会いを──ふるさと副業のリアル

最近耳にすることが増えた「副業」ですが、皆さんは「ふるさと副業」をご存知ですか? 都市部で働きながら地方の企業に貢献することができる新しい「副業」の形です。

リクルートキャリアの「サンカク」は、キャリアアップや成長を望む個人と人材不足に悩む地方の中小企業とをつなぐプロジェクトとして、2018年にこの「ふるさと副業」を立ち上げました。始めるにあたり、開発者にはどのような思いがあったのか。プロジェクトを進めていく中で、企業や働く人とどのように向き合ってきたのか。事業開発を担当した古賀敏幹さんに、現場のリアルな声も含めて聞いてみました。

●株式会社リクルートキャリア 「サンカク」責任者 古賀敏幹さん
大学院卒業後、大手電機メーカーに就職。ソフトウェアエンジニアとしてビデオ録画機器のシステム開発を経験後、新規事業開発を担当。この時にNPO法人「二枚目の名刺」と出会い、パラレルキャリアの可能性に気付く。「社外活動の機会を多くの人に届ける」というテーマに自身のキャリアを捧げるべくリクルートキャリアに転職。2018年より「サンカク」において「ふるさと副業」の立ち上げ・運営を担当。

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リクルートキャリア 古賀さん


「ふるさと副業」がかたちになるまで

──はじめに副業について教えてください。副業に対する考え方は、どんなふうに変遷してきたんですか?

古賀:10年くらい前までの副業のイメージは、お小遣い稼ぎや生活費の補填など、どちらかというと所得を増やす手段という位置付けだったと思います。ところがここ数年、副業する目的が変わってきたように感じています。例えば自己研鑽のためとか、キャリアアップにつなげるとか、自分を成長させる目的で副業を捉える方が増えてきています。

──「ふるさと副業」を始めようと考えた背景やきっかけを教えてください。

古賀:僕は和歌山県出身で、大学進学をきっかけに東京に出てきました。東京で暮らすようになってから、何かしらの形で地元とつながっていたい、何か貢献できないかというような、地元に寄り添いたいという気持ちをずっと持っていました。そんな自分の原体験を振り返って、もしかしたら他の地方出身者も同じ気持ちを抱いているのではないかな? と思ったのが、最初の着想だったんです。

一方で、「地方の企業に、都市部の人材の受け入れ希望はあるのだろうか」という疑問もありました。地方と都市部との間には物理的な距離があるので、わざわざリモートワークや副業という形をとってまで働き手が欲しいとは思わないのではないかと…。こうした感覚が強くて、アイディア自体は2016年からあったものの、具体的に動き出したのは2018年になります。

当時、たまたまリクルートキャリアの九州で働いているメンバーから「担当している企業の方々は、事業を成長させたいという意欲はあるものの、人材不足で困っている。サンカクのサービスを使って人材を集められないか?」という相談があったんです。この時に初めて「ふるさと副業」の提案書を作って、半信半疑で「5社ほど集まれば企画として実現できます」と伝えたら、なんと1週間で賛同いただける企業さんが集まったんです。こうして2018年9月15日、福岡で「第1回ふるさと副業会議」が開催されたのです。

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ミラキャリ通信特別編集:「ふるさと副業」への取り組みが加速中ー新型コロナウイルス禍により「テレワーク定着」が追い風にー


──ふるさと副業を立ち上げるにあたり、大変だったことはありましたか?

古賀:副業と一言で言っても、いわば形があるようでないのが実情で、一つひとつのプロジェクトに寄り添った対応が必要なんです。その点はとても難しいところです。例えば、ある企業ではこういう困りごとがあるけれど、どういう内容で募集したらいいのか、また企業側と副業をしたい人がお互いに合意してプロジェクトを進めることが決まった後に、時間的な制約がある「副業」というかかわり方の中で具体的に何から動き始めるのかなどなど、たくさん決めなくてはいけないことが出てくるのです。

副業する方も受け入れる企業もまだ慣れていない場合が多く、こうすればうまくいくとか、こういうふうに決めればいいなどの型があるものでもないので、一つひとつみんな手探りで進めています。

「ふるさと副業」成功のポイントは丁寧なコミュニケーション

──手掛けてきた「ふるさと副業」の中で、印象に残っている取り組みはありますか?

古賀:人材と企業の良い関係性が長く続いている事例の一つに、福岡の伝統工芸である博多織の会社「OKANO 博多きもの制作所」さんがあります。東京に1店舗、福岡に本社、本社工房、1店舗をお持ちで、東京にある店舗と福岡にある本社機能の連携を強くしたいという内容の副業募集でした。

具体的には、東京の店舗にいらっしゃるお客様の状況、同じ商業ビルに入っている他店の状況などの情報を福岡の本社側に伝えて次の商品企画に生かすという仕事。また、本社側が創りたいと思っている理想の店舗のイメージを、実際の店舗側が実現するための連携。こうした部分の橋渡しをしてほしいというプロジェクトだったのです。

「ふるさと副業」を通じて3人の副業希望者がマッチングし、そのプロジェクトを担うことになりました。3人はお互いにしっかりとコミュニケーションを取り、店舗側に寄り添う人と本社側に寄り添う人というふうに分担して上手く動いていただけました。受け入れ側も、東京の店舗と本社との間でリモートによる打ち合わせをする習慣が根付いていたので、コミュニケーションが取りやすかったことも上手くいった要因だと思います。

最も重要だったのは、副業するメンバーの受け入れに対して、受け入れる企業の役員の方が非常に理解を示してくださったことです。副業される方たちの存在意義を、自社の社員にしっかりと伝えていただき、受け入れる土壌自体をつくられていたのです。おかげでとてもいい関係性をつくることができ、今でも副業する側が定着して、企業側に貢献もできているという良い循環が生まれているんです。そこで私たちも、今年からはとくに、自治体と連携してご説明させていていただく場をつくるなど、経営者の方に関心を持っていただけるような工夫に力を入れています。

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自信につながる「副業」「プロボノ」などの社外活動

──古賀さんご自身は、副業の経験はありますか?

古賀:大学院を卒業後、大手電機メーカーに就職しました。ここでパラレルキャリアのような形でNPOの活動に参加させてもらう機会があったんです。3カ月間のプロボノ(※)活動で、ウェブマーケティングの仕事を担当させていただきました。自分自身は、もともとエンジニアでしたのでウェブマーケティングは未経験の領域だったのですが、すごく興味があって。

※職業で培ったスキルや専門知識を活かしたボランティア活動

これが副業との出合いにおける最初の体験でした。ここでどんどん自分のキャリア観が変わっていったんです。社外のコミュニティに属してみて、社外の立場から世の中の動きに触れた時、視野が大きく広がって、「自分は、今まで何をやっていたんだろう」と思ってしまうほどの衝撃でした。こういう機会や選択肢をもっとたくさんの人に届けていきたいと強く感じて、リクルートキャリアへの転職を決めました。

その後も、最初に出会ったNPOの活動に再び従事したり、研究員のような形でベンチャーキャピタルに関わらせていただいたりしてきました。

──副業などの「社外活動を体験する価値」とは、どんなものですか?

古賀:実は、「僕は社内ではある程度貢献できているけれど、会社の外に出たらあまり役に立てないんじゃないか」と考えていたんです。でも、NPOでウェブマーケティングの業務に携わった時、意外にもある程度の成果を出すことができて、多くの人に感謝していただけた。「僕ってもしかして、自分をそんなに低く見なくてもいいのかな?」という気持ちになれました。

なぜこうなったのだろうと周囲を見渡してみると、本来はもっと社外でも活躍できるのに、以前の自分のように、自信が持てなくて自分から可能性を閉ざしている人が多いように感じたんです。

この時感じたことを言葉にしたいと思い、「社外活動がキャリアにどのような影響を及ぼすのか」という調査を行ってレポートにもまとめました(下図参照)。

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矢印にある数字が大きいほど自信につながる効果があることを示す
出典:サンカク、二枚目の名刺 協働調査「副業を含む社外活動がキャリア意識に与える影響」(https://www.recruitcareer.co.jp/news/20170313_01.pdf


わかったことは、社外活動に参加する目的は、大きく4つ。「社会貢献への意欲」「新規の経験・人脈の獲得の期待」「キャリアチェンジの機会探索」「副収入への意欲」なんです。

また、こうして従事する社外活動には、次の3つの特徴があると考えました。
1つ目は「他者と影響を与え合う機会」。何らかの事業に携わって感謝されるといった、フィードバックがある機会ですね。2つ目は「新規の人脈を獲得する機会」。異業種交流会で名刺交換をする機会などが含まれます。3つ目は「新規の経験や学びの機会」。学校に通って学習するなどです。

それぞれの効果を分析したところ、興味深いことが分かりました。名刺交換をただたくさんしても自信にはつながらず、学校に通っても、学びっぱなしだと自信につながらないことが多い。でも「他者と影響を与え合う機会」、つまりフィードバックの機会があると、自信につながっていくんです。さらにもう1つ、社外活動によって刺激を受けることで、本業における当事者意識や主体性が芽生えるといった効果もあることが分かりました。

自信につながったり、本業での主体性が芽生える―――。副業などの「社外活動を体験すること」には、こうした価値があると考えるに至りました。

副業や社外活動をきっかけに、心から熱中できるテーマとの出会いを

──サービスを進めていく上で大切にしていることは何ですか?

古賀:私たちが目指すビジョンは、「日本中の働く人が、やりがいをもって仕事に向き合えている社会の実現」です。この「やりがい」こそ、先ほど触れた「自信」や「主体性」なんです。

続いてミッションは次の3つです。
「会社の壁を越え、一緒に働きたいと思える仲間との出会いを創出する」
「会社の壁を越え、働く人に飛躍・挑戦する機会を提供する」
「働く人が『これから5年間のキャリアで何に熱中したいのか?』を自分自身で考え、意思決定する機会を提供する」

例えば僕の場合、以前はすごくモヤモヤする中で生きていましたが、副業によって新たな気づきを得て、自分に自信を持つことができた経験をしました。こういった体験を経て「社外活動をする機会を多くの人に届ける」というテーマに自分のキャリアを捧げると決めたんです。

このように何か熱中できるテーマに向き合うと、人の心は折れないと思います。私たちは、こういう機会を多くのビジネスパーソンに届けていきたいと考えています。これが、一番届けたい価値なんです。

図3

(写真:2018年・ふるさと副業のマッチングイベントの様子)


──最後に、副業や社外活動に一歩踏み出すことを躊躇している人へ、メッセージをお願いします。

古賀:やらない理由を探すことは、すごく簡単です。でも、もしやらない理由を潰せばやるだろうと思っても、次のやらない理由を探すだけではないでしょうか。だから逆に、やりたい理由を探すことが大事です。地元に貢献することもその1つで、「これはやりたい!」と芽生えたものがあれば、その気持ちを大事にすることこそが大切なのではないでしょうか。いまは、そう感じています。

──ありがとうございました。

※肩書、担当業務などは取材当時(2020年12月)のものです。

■関連リンク
「ふるさと副業」を提供するリクルートキャリアのサービス「サンカク」


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