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著名クリエイターと京都の職人がつくる、クリエイティブな風呂敷が生まれるまで

その数、167枚。

2019年12月、ホリデーシーズンに沸く銀座の一角に、70cm角ほどの色鮮やかな風呂敷が会場一杯に吊されたギャラリーがありました。グラフィックデザインに焦点を当てたデザインギャラリー『クリエイションギャラリーG8』です。

Creation Project』と題したこの企画は、日本のものづくりとデザインの価値や魅力を伝えるチャリティーイベントとして1990年から毎年開催されています。今年は風呂敷を題材に、ギャラリーにゆかりのあるクリエイターの方々が描いたイラストや絵柄を、京都の職人が1枚1枚手仕事で染め上げたものを展示・販売しました。

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このプロジェクトに携わるクリエイターは、どのような想いで風呂敷と向き合ったのか。一つひとつのアイディアが職人の伝統技術と合わさって最終的に形になるまでに、どんなプロセスがあったのか。そして、なぜこのプロジェクトを30年弱に渡り続けているのか。

本プロジェクトの参加クリエイターのひとりで、宣伝美術も担当した一乗ひかるさんと、今年の企画を担当した、ギャラリー担当者に話を伺いました。

風呂敷というフォーマットを活かしたデザイン

一乗「もともと、シルクスクリーンなど布媒体の作品はよく作っていたので、自然と形になっていきました」

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一乗ひかるさん

今回手掛けた作品を、一乗さんはこう振り返ります。現在、デザイン誌の表紙やブランドの広告ビジュアル、最近ではPARCO GIFTのビジュアルを担当するなど、イラストレーターとして多方面で活躍されています。

元々は、グラフィックデザイナーやアートディレクターを志し、東京藝術大学へ入学。在学中にイラストを描き始め、大学院卒業後にデザイン事務所へ就職。1年後に独立し、今に至ります。

風呂敷のイラストも、一乗さんが普段手掛けられるアナログ調でテクスチャをふんだんに使ったもの。ただ、今回はその“媒体”ゆえの制約をうまく生かしたイラストに仕上げているといいます。

一乗「今回の風呂敷は、京都の職人さんによる手仕事で刷っていただくため、一色刷りと決まっていました。そこで、濃淡をつけ、単色ながら色幅が感じられるようなイラストに落とし込んでいます」

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一乗さんがデザインした風呂敷

一乗さんは今回、宣伝美術のイラストも担当。アートディレクションを担当した髙田唯さんとともに、風呂敷のもつ雰囲気を活かしつつ、ビジュアルへと落とし込んでいきました。

一乗「『ふろしき百花店』という名前は決まっていたので、風呂敷のよさやらしさが伝わるイラストを心がけました。髙田さんとも相談しつつ何案かラフを考え、最終的にはイベント名にある“花”という字から、“いろいろなものを包んだ風呂敷”が花に見えるというコンセプトで形にしています」

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Creation Projectは、毎年『クリエイションギャラリーG8(以下、G8)』と『ガーディアン・ガーデン(以下、GG)』という銀座にあるふたつのギャラリーに関わりのある作家さんに制作を依頼しています。一乗さんは2015年にガーディアン・ガーデンで開催されたグラフィックの公募展『「1_WALL」』でファイナリストに選出。その経験が、今回の宣伝美術のイラストを手掛けるきっかけになりました。

一乗 「当時、私が応募した作品は大学の卒業制作でした。自分ではよくできたと思っていたんですが、大学ではあまり満足のいく評価が得られなかった。そこで、他の環境にいる人に見てもらい、意見を聞いてみたいと思って応募したのが、この「1_WALL」だったんです。審査では様々な意見が飛び交いましたが、本当に人や環境によって視点や評価が異なると肌で感じられたのは、よい経験になりました」


職人の挑戦的な姿勢が、前例のないデザインを導く

「1_WALL」やCreation Projectを開催する『G8』『GG』は、いずれもリクルートが運営するギャラリーです。今年のプロジェクトを主に担当したのは、小森福見と桑間千里。

日本各地、様々な職人さんとともに作るCreation Project。過去には豆皿や靴下、磁器など様々なプロダクトで開催してきた中、今年風呂敷を選んだ理由を二人は以下のように語ります。

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リクルートクリエイティブセンター 桑間千里

桑間「風呂敷は面積が広い分、表現の範囲が広く、クリエイターの方々にもさまざまなデザインを考えていただけるのではないかという期待がありました。あわせて、日本の伝統やものづくりの技術として長年培われてきたものがあるという観点も理由のひとつです」

小森「今回は、いま一度“日本のものづくり”に立ち返り、京都の職人さんにお願いしました。Creation Projectでは、167種類を短期間で販売しますが、生産枚数は多くありません。そうしたさまざまな条件の中で、私たちも現地に伺ったりしながら、ご協力いただける職人さんを探しました」

ただ、167枚もの絵柄を一気に制作することも、その絵柄が伝統的な文様ではなく現代のクリエイターによるものというのも、職人さんにとってははじめてのこと。前例のない取り組みでしたが、長い歴史の中で挑戦を重ねてきた”職人魂”があったからこそ、様々なデザインの風呂敷を創り上げることができたのです。

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小森「今回は手捺染(てなっせん)で染色しているのですが、これは色の境界が明確に分かれているもののほうがきれいに色が出やすい手法です。クリエイターさんにもその旨をお伝えしていたのですが、やはり表現する側の人にとっては、それぞれの作風もあり、難易度が高い図版をお願いする場合も多かったんです。ですが、「無理かも知れませんが、一回やってみましょう」と、挑戦してくださったんです」

桑間「この167種類のデザインは、これまでの経験だとグラデーションが欠けてしまったり、柄がきれいに再現できないのではないかと危惧されていました。しかし、実際に試すなかで綺麗に出す方法を見い出してくれたんです。職人さん自身も、表現の幅も広がったと、喜んでくれていました」

クリエイターのネットワークが生んだプロジェクト

今回会場となったG8とGGは、それぞれ1985年、1990年から続けているギャラリーです。情報誌・インターネット・モバイルなど多彩なメディアを通じてビジネスをするリクルートにとって、ビジュアル表現は必要不可欠なもの。その背景から、こうしたギャラリーを通してクリエイターの支援となる機会や場を提供しています。

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リクルートクリエイティブセンター 小森福見

小森「G8は、デザインを通じて豊かな生活を提案して、コミュニケーションの場となる活動を。GGは、新しいクリエイターの発掘と成長をサポートする場として、グラフィックや写真の分野のコンペを中心に活動をおこなっています。一乗さんが参加してくれた「1_WALL」はその中心となるコンペで、新たな才能の発掘と若いクリエイターの活動を応援しています。G8は、広告やメディアで事業展開をする中、関連するデザインを主軸に地域に貢献しようと設立されたギャラリーです」

一乗さんをはじめ、今回のCreation Projectに携わったクリエイターの方々は、いずれもG8やGGで、過去何かしらのプロジェクトに携わられた方々です。GGでのコンペを通過点として参加いただけた方もいれば、G8で実験的な展示に取り組まれた方もいるといいます。(ご協力いただいたクリエイターと風呂敷のデザイン一覧はこちら

小森「今回のようにボランティアにも関わらず、第一線で活躍される方々や新進気鋭のクリエイターの皆様にご協力いただけて、これまで活動してきたことが少しでもつながっているのかな、と嬉しく思います」

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インタビューの最後、この風呂敷をどう楽しんで欲しいかを伺うと、作り手と企画者違う立場ながら、同じ思いが語られました。

小森「167種類のデザインから自分の好きなデザインを持って帰って、生活の中に取り込んでいただきたいです。購入いただくことで、プロジェクトの一員としてチャリティーに参加いただけることにもなる。クリエイティブの力で直接的に社会に貢献する機会に是非参加いただけると嬉しいなと思います」

一乗「はい、見るだけではなく、購入までしてもらえると一番嬉しいですね。私たちクリエイターのアイディアや想いもそうですが、職人さんの想いも詰まって形になっているものなので、気に入ったデザインがあれば手に取ってみていただきたいです」

■ ふろしき百花展
http://rcc.recruit.co.jp/creationproject/project/2019/

■ オンラインショップ「ポンパレモール」
2020年1月末までの期間、以下のサイトより風呂敷を購入いただけます。本プロジェクトによる販売収益金は、未来を担う子どもたちの支援のために、セーブ・ザ・チルドレンに寄付されます。
https://store.ponparemall.com/rcc-gallery/

※プロフィール等は取材当時のものです


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