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海外とのビジネスを通じて、多様性を模索していく――日之出産業

神奈川県横浜市に本社を置く日之出産業株式会社は、1976年の設立以来、排水処理の専門企業として、さまざまな排水処理薬剤を製造・販売を行ってきました。同社は、省エネ・省コストで、トラブルの少ない水処理システムを提供している企業でもあります。

J-WAVE(81.3FM)の人気モーニングワイド「J-WAVE TOKYO MORNING RADIO」内でさまざまな企業が取り組んでいる「新しい働き方」から、これからの変化や未来を考える「RECRUIT THE WORK SHIFT」。本記事は、過去の放送の中から、「日之出産業株式会社」の取り組みをご紹介します。

アフリカの若者たちと切磋琢磨し、ビジネスチャンスを見つけていく

会社設立から30年が過ぎたころ、日之出産業独自の排水処理設備は高い評価を受けていたものの、日本の排水処理システムの市場は既に飽和状態でした。そこで同社では、中国や韓国、タイ、ベトナムなどのアジア諸国への進出を計画したそうです。

そんな中、2013年に横浜市で開催された「第5回アフリカ開発会議」に横浜市から要請を受けて、日之出産業が参加。そのとき、「アフリカでの環境ビジネスに大きな可能性を感じた」のが、同社取締役の藤田香さんでした。

藤田さんはその当時のことを、こう振り返ります。

「自分たちの仕事が、このまま日本国内だけで取り組むビジネスではないということは、社員全員の心の中にあったと思います。ただ、現在日本で行っているビジネスをそのまま海外に持っていけるかというとそうではない。『第5回アフリカ開発会議』で、現地の方々から、何が必要で、どういうことをしたいのかを聞けるチャンスを得られたことは非常に大きかったです」

「当社の事業は、SDGsの目標6『安全な水とトイレを世界中に』に相当していて、その達成のために私たちの技術を生かしていきたいと考えました。特に途上国、新興国といわれる国や地域では、まだまだ日本の技術を受け入れてもらえると思うので、いかにうまく彼らに技術移転できるかを考え、2016年から始めたのがアフリカからの留学生のインターンシップ受け入れだったんです」

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日之出産業株式会社 取締役・藤田香さん

自分たちのビジネスの将来性を広げてくれるかもしれないアフリカの若者たちを受け入れた日之出産業。そこで必要になってくるのは独自の技術を教えるだけではなく、その技術が使われる先のニーズを知り、ローカライズさせること。当初は、社員の数と変わらないほどのアフリカ人の若者がインターンとしてやってきて、社員たちは戸惑っていたといいます。

しかし、お互いに必要としていることが合致していく中で、コミュニケーションは活発になっていきました。藤田さんはこのように話します。

「最初は9人のインターン生がアフリカ各国から来ました。お互いの問題点や課題を話し合い、本当に必要な設備や、水処理がうまくいかない場所はどこなのかなどを探していきました。彼らは、私たちの技術をアフリカでどのように扱うと良いかをシミュレーションして、自国で扱う際にどの点が課題になりそうか、一番ビジネスチャンスがあるのはどこなのかといったことを発表し、ディスカッションを重ねました」

多様化する働き方の中で、国を越えたコミュニケーションを深めることは、ビジネスの可能性につながっていきます。インターンとはいえ、アフリカ各国のエリートである若者たちと仕事をすることで、刺激を与え合い、ビジネスチャンスを見つけていった日之出産業の社員たち。その後、同社と彼らとのネットワークはアフリカ各地に広がっていったそうです。

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女性目線の重要性

日之出産業では、アフリカ各国から毎年インターンを受け入れるだけにとどまらず、2019年1月にはセネガル人男性、同年10月にはモロッコ人女性を社員として採用しました。アフリカからのお客さまだった若者たちは、自分たちの仲間になりました。

同社がインターンを採用する上で、重視しているのが女性の採用だといいます。その理由について、藤田さんはこう語ります。

「今までに60人以上のインターン生が当社に来ていますが、当初は環境ビジネスや技術系の業界は男性の方が多いと思っていました。しかし、実は優秀な女性がこの分野に多く関わっていることが分かり、インターンでは必ず女性を何人か採用するようになりました。今年はインターン9人中6人が女性でした。ディスカッションにおいても、女性の視点があることはとても大切だと感じていますし、エンジニアや研究者として、彼女たちは活躍できる場を探しているのではないかと思いますね」

日之出産業でのインターン後に南アフリカで起業したり、スーダンでNPOを立ち上げたりして、現地の課題解決に取り組む女性も出てきており、彼女たちが新たな形でのビジネスパートナーになるケースも多いようです。

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日之出産業は、国連工業開発機関が定める「開発途上国の新型コロナウイルス(COVID-19)や様々な感染症対策に役立つ技術をもつ日本企業」にも選ばれており、モロッコの集落で生活排水を農業用水に変えるプロジェクトも進めています。

遠くの国に技術を伝え、ビジネスを進める日之出産業。そのときに必要なコミュニケーションについて、藤田さんはこのように考えています。

「いろいろな国がある中で、今は普通に会話もできるし、そこからビジネスが生まれる時代でもあります。プロジェクトでは、多いときは毎日、時差がある中でミーティングをしなければなりません。今はコロナ禍で現地には行けないので、リモートでどのように分かりやすくプロジェクトを進めていくかをお互いに考えています。当社では水質分析の仕方や、アフリカ側では問題点となっていることを一つひとつビデオに撮り、記録に残すことでお互いに一目で状況が分かるようにしています」

多国籍の社員を抱えるようになったことで、同社では英語やフランス語の資料も作成できるようになったため、現地とのコミュニケーションはさらにスムーズになったとか。リモートワークが難しいと思われた技術系の業界で、コロナ禍をたくましく乗り越えています。

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全社員に必要であり、周りの理解も得られるようなテレワークを

海外とのつながりを広げる一方、国内では女性のライフステージの変化に対応するために、テレワークの導入をいち早く進めてきました。その背景には、技術職で女性を採用したとしても、ライフステージの変化に対応できず、長続きする人が少ないといった経験があったようです。

同社のテレワーク導入に関して、藤田さんに伺いました。

「採用する人の年齢はわりとバラバラなことが多いのですが、やはり女性の方が、仕事をする上でライフステージの変化の影響を受けやすいんです。そこで2014年からは、育休中の社員とのコミュニケーションという形でテレワークを取り入れたところ、その人が復職したときに非常にスムーズでした」

「育休だけでなく、仕事を辞めずにキャリアアップできるように、また介護の問題も同様に、仕事を続けられるようにすることを考えてきました。これは女性だけでなく男性にも当てはまることだと気付き、テレワークは全社員に広げていくべきであり、周りの理解も得られるようなシステムにしていかなければならないと思っています。現在は、すべての社員がテレワーク可能な形態としています」

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2018年には、神奈川県のテレワーク実証試験に同社のベテラン女性社員が参加。何ができて、何ができないのか、セキュリティはどうなのかなど、あらゆることを実証し、就業規則とテレワーク規則を整備していったそうです。

当初、社内からは、「テレワークは大企業がやるものだ」という反対の声が社内から上がっていたそうです。それでもテレワークの取り組みを続けてきた結果、「やってみれば、ここまでできるのか!」と、多くの社員の理解を得られるようになってきました。

「中小企業くらいの規模の方がコミュニケーションを取りやすいかもしれない」と話す藤田さんは、これまで1対1の口頭で伝えていたことも、メールやチャットで送っているとのこと。それによってテキストが残るので、全員に共有できるという透明性があり、効果的だと感じているそうです。
また、一斉メールや社内掲示板などを使用して、しっかりと考えたことを残る言葉として発信できるようになったことも、良かったと話していました。

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目標を同じにした、いろいろな考え方を持った人たちで事業を進めていく

コロナ禍に入り、対外的な営業のアプローチが難しくなる中、水処理システムという専門的な領域でどのように顧客を獲得していくか。その答えは意外にも、社外ではなく会社の内側にありました。

藤田さんは、こう語っています。

「コロナ禍になって、現場に行きたくても行けない、対面で会えないという状態になりました。それで営業ができないのかというと、そうではありません。ホームページやSNSなどでの広報活動をしたり、多言語で資料を作成したり、言葉で分かりづらいものは映像を使って紹介したりと、自分たちの内側にあるもので工夫を続けていたら、顧客の方からアプローチがあったんです」

外に出られないときは自分を磨いて待つ。そんな姿勢でピンチを乗り越えてきた日之出産業。最後に、今後の働き方について藤田さんに伺いました。

「コロナ禍を通して、多様な働き方ができることに、多くの人が気付いたと思います。そんな中、私たちも部門横断型のプロジェクトを始めました。シニア、若い人、男女、国籍が入り混じってワークショップを行い、最後に発表する。一つの目標に向かって、全員が同じ考えを持っていることが良いというのが、これまでのやり方。そうではなく、目標は同じだけれども、いろいろな考え方を持った人たちで事業を進めていくのが今の時代。多様性は大事だと思います」

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日之出産業株式会社の働き方への取り組みから番組が導き出した「WORK SHIFT」のヒントは・・・『一つの目標に向けて、多様な考えとアプローチで進んでいこう』でした。

アフリカからも社員を採用している日之出産業の働き方。全体の目標はブレない、しかしそこにたどり着くための考えやアプローチは多様であることが、可能性を広げています。

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■「RECRUIT THE WORK SHIFT」バックナンバー

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