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ディーセントワークから考える、自分らしい働き方の模索――NPO法人ディーセントワーク・ラボ

国連が採択した持続可能な開発目標「SDGs」は、すべての人にとってより良い、より持続可能な未来を築くための青写真。貧困や不平等、気候変動、環境問題、平和と公正など、私たちが直面するグローバルな諸課題の解決を目指すものです。解決目標は17個あり、その8番目に掲げられているのが、“ディーセントワーク”=「働きがいのある人間らしい仕事」。

2013年に設立されたディーセントワーク・ラボは、まさにその“働きがい”と“人間らしさ”につながっている「障がいのある人の働く」ということをサポートしてきたNPO法人です。「働くすべての人に喜びと安心を!」というミッションを掲げ、働く環境が十分に整っていない障がいのある人の「役割」や「仕事」をつくり、そこから、すべての人の「働く」にもつながる活動を行っています。

J-WAVE(81.3FM)の人気モーニングワイド「J-WAVE TOKYO MORNING RADIO」内で、さまざまな企業が取り組んでいる「新しい働き方」から、これからの変化や未来を考える「RECRUIT THE WORK SHIFT」。本記事は、過去の放送の中から、「NPO法人ディーセントワーク・ラボ」の取り組みをご紹介します。

“働きがい”、“人間らしさ”につながるディーセントワーク・ラボの活動

はじめに、企業名にも使われているディーセントワークとは一体どんな働き方なのでしょうか。NPO法人ディーセントワーク・ラボ代表理事の中尾文香さんにお話を伺いました。

「ディーセントワークは『働きがいのある人間らしい仕事』と訳されます。SDGsの目標の8番目に『Decent work and Economic growth(働きがいも 経済成長も)』とあり、ディーセントワークという言葉が入ることで、より多くの人に知られるようになりました。私たちはディーセントワークをどう捉えているのかというと、『社会の中でなんらかの役割があること』だと考えています。働くことで金銭的報酬を得られるだけでなく、働く人が“何かの役に立っている”と思うことができ、本人も周りの人も『あの人の役割はこうだよね』と分かっている状態が『ディーセントワーク』だと考えているんです」

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NPO法人ディーセントワーク・ラボ 代表理事・中尾文香さん

ディーセントワークを一部の人だけでなく、すべての人での実現を目指していく。“働きがい”、“人間らしさ”につながるディーセントワーク・ラボの活動とはどのようなものなのでしょうか。

「主に4つあります。福祉施設では、障がいのある人がお菓子や小物などを最初から最後まで手作りしていることが多く、質も良いのですが、施設には福祉のプロしかいないことがほとんど。そこに、ものづくりのプロの人たちと私たちが入って、手作りの良さを最大限に生かすものづくりとはどういうものなのかとか、作ったものをどこで販売するのがいいのかなどを検討することで、障がいのある人の働き方について考えたり、作ったものの販売場所を増やしたりする活動が1つ目です」

「次に、企業で働く障がいのある人たちは、どうやったらより良く働けるようになるのか、企業の人たちと考えながら、サポートしていくという活動。3つ目は、そうしたことを調査・研究・事業としてまとめて、多くの人に伝えたり、政策を提言したりすること。4つ目は、それをいろいろな人に研修して、ワークショップをしながら知ってもらうことです」

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障がいのある人が、賃金を得て生活するのはもちろんのこと、喜ばれるものを作ったり、必要とされたりする仕事場を育てていく。そこから得た知識やデータを多くの人に伝え、より良い環境、働き方に生かしていく。すべての個性が輝けるための知恵を培っています。

凸凹が大きい=できるところとできないところの差が激しい

社会の流れとして、日本でも2000年代に入り、「企業が果たすべき社会的責任=CSR(Corporate Social Responsibility)」への意識は高まっていきましたが、時代はその先に流れていき、いま「CSV(Creating Shared Value)*」という考え方に注目が集まっています。経済的価値と社会課題の解決を両立することを可能にする「CSV=共通価値の創造」は、ディーセントワーク・ラボが目指す働き方にもつながっています。

*CSV:ハーバード大学のマイケル・ポーター教授が提唱した考え方で、共通価値の創造を意味する。企業が、社会のニーズ、社会にあるさまざまな課題の解決を一緒に取り組んでいくことによって、社会課題も解決しながら、かつ経済的な価値も生み出していくというアプローチ。

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中尾さんは、こう話します。

「障がいというとできないこと、難しいことと思われがちですが、私たちはそれを“凸凹が大きい”=“できるところとできないところの差が激しい”と捉えています。突出した“できるところ”が、仕事とマッチしたときには想像以上の働きをする場合があります。私たちはそんな大きさやかたちが違う多様な凸凹を生かしたり、マッチさせたりする活動をしています」

障がいのある人の中には、大量のものを制作するときも、一つひとつ丁寧にものづくりをする姿勢があります。その特性を生かした雇用が広がれば、よりSDGsやCSVにつながっていくと考えられ、同法人は現在そのトップランナーとして、さまざまな仕事を創出しています。

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やりたいこと、できること、苦手なことをお互いに伝え合う

そんな一人ひとりの強みを生かして戦力にしていく働き方には、組織と個人の関係の変化、意識の変化も大切になってきます。

中尾さんは語ります。

「今までは、会社や仕事に個人が合わせていた時代だったと思います。これからは、仕事や企業に個人が合わせるのではなく、個人の特性やスタイルに会社や周りが合わせていくというように、視点を大きく変える必要がある。もちろんそれは大変なことですが、ただ単に個人の要求を聞き入れるのではなく、お互いに伝え合うことによって、相手の働き方も尊重するし、自分の働き方も尊重してもらえるという新しい可能性が出てくると思うんです。これが新たな社会的価値であり、やりたいこと・できることをお互いに伝え合う、チーム内での試行錯誤を通して、個人のみならず、組織も変化・成長していくプロセスがある。それを積み重ねていった先に、ディーセントワークが見えてくるのではないでしょうか」

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自分らしい働き方の実現のために

中尾さんは、これまでの活動から、ディーセントワークとは「自分らしく働くために、働き方をカスタマイズすること」だといいます。

自分らしい働き方の実現のためには、相手とのコミュニケーションや、プロセスを大切にする。そこを重視した上で最適解を探していく。さらに中尾さんは、“考え方のクセ”や“行動パターン”で分けられる「働き方のタイプ」を知ることが、自分らしく働く“ディーセントワーク”への近道だと考えているそうです。

「人は相手とタイプが違うだけで分かり合えないことが多いですが、相手の話を聞こうとする、自分のことを知ろうとすることが大事で、相手と自分のタイプを知っておくと必要以上に悩まなくて済みます。自分らしく働くためには対話を通して自分と相手のことを分かり合うこと、そういう環境を整えることが大切になっていくと思います」

「いろいろな場所で、いろいろなスタイルで、自分らしく働く。ライフサイクルに応じた働き方が選択できる。そうしたことが大事だという認識は広まっています。実際にそうした企業に就職したい、社会貢献、SDGsにつながっていることをやりたいという人は、すごく多くなってきています。今までは、働くには自分を犠牲にしなければならないとか、我慢しなければならない、ということで窮屈になりすぎると、働くことがつらくなる部分があったと思います。思ったことをちゃんと言い合える関係や、話し合いをすることでお互いの最適解を探していく考え方などが、これからの働き方のベースになっていくんじゃないかと思います」

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NPO法人ディーセントワーク・ラボの取り組みから導き出す「WORK SHIFT」のヒントは・・・『“働きがい”というポジティブなパワーは企業の成長にもつながる』でした。

“働きがい”を生み出す会社、“働きがい”に寄り添える会社には人が集まる。自分らしく働けるポジティブな環境で生まれたチカラは、企業の成長にもつながっていくはずです。

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■「RECRUIT THE WORK SHIFT」バックナンバー

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