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就職後の“納得感”を高めるために。オンライン会社説明会の開発と向き合った1年

2020年3月1日。就活解禁日であるこの日から、就活生のスケジュール帳は説明会や面接の予定で埋め尽くされている……はずでした。

しかし、今年は新型コロナウイルス感染拡大の影響で、オフラインでの就活関連イベントは次々と中止になりました。時を同じくして、リクルートキャリアは、コロナ禍における学生の不安を解消するサービス『リクナビFaceMovie』(以下、FaceMovie )をリリース。開催が難しくなった対面での会社説明会を、オンライン上でスムーズに行えるようにしました。

担当者である新卒メディア統括部・統括部長の大家純一と、事業推進部マーケット創出グループの鈴木敬直は、「コロナ禍の影響だけで生まれたサービスではない」と話します。

「新型コロナウイルスの感染拡大以前から、例年『あの企業の説明会に参加したいけれど、時間が合わない』『移動時間や交通費を考えると、参加する企業を絞らざるを得ない』といった悩みが学生から聞かれていました。私たちはできるだけそうした学生の悩みや負担を減らせたらと考えています。今回のFaceMovieは、そのための取り組みの一つです」

今回は、就活の現状と事業部としての思いを大家に、そしてFaceMovie開発の狙いと裏側を鈴木に聞きました。

選択肢が増えた半面、生まれてきた課題

商社勤務を経て1997年に埼京リクルート(現リクルートジョブズ)に入社し、その後は一貫して就職支援の領域で営業、商品企画、リクナビ編集長や大学支援などの仕事をしてきた大家。昔に比べて学生の選択肢が増えた一方で、新たな課題も生まれてきたと語ります。

大家「リクルートは1960年、学生側に自分の意思で就職先を選ぶという選択肢が少なかった時代に、『学生の選択肢を増やしたい』という想いで、学生に企業の新卒採用情報を提供する事業を始めました。

このベースの想いは変わっていませんが、一方で多くの変化もありました。メディアは紙からインターネットへと変わり、情報収集やエントリーが以前よりもはるかに簡単にできるようになりました。

『誰でもどこでも何社でも受けられる』 というのは学生と企業双方の可能性を広げたと言えますが、それと同時に新しい課題が生まれてきたことも事実です。現在の就職活動においては、学生は大量に応募し、企業はその数に対応せざるを得ない形なってしまっています。

すると、企業が学生一人ひとりにかけられる時間と労力が限られ、お互いに理解し合うための十分なコミュニケーションが取れない場合もあります。また、学生は多くの企業にエントリーして自分の可能性を広げることができる一方で、本当に自分に合った一社を探すための情報収集や自己分析にかける時間が少なくなってしまいがちです」

その情報収集や自己分析のきっかけとなり得るのが、近年増加しているインターンシップです。リクルートキャリアの「就職みらい研究所」が行った調査によると、新卒採用を実施している企業のうち、2018年度にインターンシップを実施した(もしくは予定していた)企業は95.9%と、前年度よりも11.3ポイント増加しました(※就職白書2019、就職みらい研究所より)。

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▲新卒メディア統括部・統括部長 大家純一

大家「インターンシップは、学生が実際に働く環境を知ることができる非常に重要な機会です。それと同時に、企業にとっては自社の雰囲気や仕事をより深く知ってもらえる。こうした背景から、広く浸透していきました。一方で、最近は学業と重なる日程での開催が常態化してしまっている状況があります。学生が学生の間にしかできない学習や体験にも時間を費やせるよう、インターンシップの枠組みを作っていくことが必要だと考えています」

こうした現状のなかで自分たちにできることは何か。大家たちは、多様な観点から検討や取り組みを重ねてきました。

大家「従来からの取り組みに加えて、『リクナビDMPフォロー』の反省も踏まえ、特にこの1年間、全てのサービスにおいて『学生ファースト』を掲げ、強く意識してきました。学生にとっての価値につながっているか否かを最優先に意思決定をするようにしています」

例えば、前述のように近年増加するインターンシップに関しても、学生の負荷を減らし学業に集中できる環境を作ろうと、取り組みを進めています。

大家「リクナビに掲載するインターンシップや1day仕事体験は、夏季休暇や冬期休暇の期間と、土日祝日のみの開催に限ると決めました。今年6月からはインターンシップに参加した学生がその内容を評価する機能も実装。9月には評価をサイト上で公開する取り組みも始めています(詳細はこちら)。

学生による企業への評価が公になることは、長期的に質の高いインターンシップが増えることにつながり、学生が自分の選んだ仕事に納得感を持てる環境を実現する重要な一歩になると考えています。それは長期的にみて、企業にとっても、社員の定着を高めるなどのメリットにつながると思います」

自分の選んだ就職先に“納得感”が持てるような環境を

自分自身も深い就職活動ができず、就職後にミスマッチに悩んだ経験があるという大家。「働くことの本質・深さを考えて就職活動に取り組み、自分の選んだ就職先に納得感が持てるような環境を作りたい」と話します。しかし現状、「満足感は高いが、就職後の納得感が低い」という状況になってしまっているといいます。

大家就職白書2019によれば、入社予定企業に『満足している』と答える学生は83.0%。一方で、入社予定企業に『納得しているか』という質問に『あてはまる・どちらかと言えばあてはまる』と答える人は67.4%。満足度よりも15ポイント以上低い数値となっています。

つまり、学生は志望度合が高い企業に内定し、就職先に『満足』しているけれど、本当にこの企業が自分にとって良かったのか、『納得』はしていない状態と考えられます。大量のエントリーシート(ES)の作成や面接、インターンシップの参加に追われ、一つひとつの企業の情報を深く調べきれていなかったり、その企業で実際に働く姿をイメージしきれていなかったりする。その結果、就職先への納得度の低下につながっていると分析しています」

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▲就職白書2019の結果からは、就職活動全体を振り返った上での入社予定企業、組織等への納得度が年々減少していることもわかる。

また、納得感が低いまま就職をした学生は、入社後にミスマッチを感じやすく、ネガティブな動機での転職率も高くなるというデータもあります(※)。こうした構造は就活という一時点にとどまらず、将来的にネガティブな影響を与えてしまう可能性もあるのです」

(※)公益社団法人全国求人情報教会「2019年新卒者の入社後追跡調査

納得感につながる“相互理解”の時間を増やすために

一人ひとりの就職後の『納得度』を高めたい——。

そのアプローチの一つが、3月にリリースしたFaceMovieです。学生の就職後の納得感を高めるために大切な要因の一つが、学生と企業が十分にコミュニケーションをとり、お互いをよく知ることとされています(※)。

では、学生と企業がお互いを“知る”ための時間を増やすにはどうしたらよいか。そう考え取り組んできたのが動画を使った説明会です。

いつでも・どこでも見ることができる動画説明会であれば、従来に比べて説明会を予約する工数や足を運ぶ時間を減らすことができます。その空いた時間で、学生と企業が互いにコミュニケーションをとり、相互理解ができる時間を創出できないか――。そんな想いが起点にありました。

FaceMovieでは、学生が移動時間や移動費用をおさえつつ、自分のスケジュールにあわせてオンラインで会社説明会の動画を視聴することが可能です。リアルでの開催では足を運ぶことが難しい遠方の企業の説明会にも、オンラインであれば参加ができます。同時に会場費の削減や撮影した動画を繰り返し活用できるなど、企業側の負担を減らすことも可能になります。

また、説明会動画を見て興味がわいた場合、そのまま面接の日時まで予約できるのも特長です。リクルートキャリアは、学生が求める視点で機能を検討し、企業の動画作成にもアドバイスするなど、「学生にとっての価値」を重視してFaceMovieの開発や企業への提供に取り組んできました。

(※)就職みらい研究所「就職白書2020

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▲動画説明会のイメージ

鈴木「“就職後の納得感”を高めるためには、何が必要になるのか。データからわかったのは自分が関心を持つ企業に対する『情報収集量の多さ』が重要ということでした。この時、必要とされる情報には二つあると思っています。一つは、入社志望の企業以外の業種も幅広く情報を収集してみること。もう一つは、自分が働いている姿をイメージできるような情報を深く得ることです。FaceMovieは、こうしたことにも貢献できると考えています。

これまでは説明会や面接に参加する際の移動コストがかかり、学業との両立も考えると、どうしても志望度が高い企業や一部の企業に応募が集中してしまいがちでした。でも、日程が重なったために説明会をキャンセルした企業が、本当は自分に合っていたかもしれない。このような、“自分のなかで十分に多様な企業を知った上で選んだ”というプロセスがないということが、満足度は高いけれど、納得度が低くなることにつながっていると考えています」

移動時間や拘束時間が長くなる就活において、FaceMovieで生まれる時間的な余裕は小さくありません。その時間を使い、多様な企業や業種と出会うきっかけにしてほしい――。そんな想いでサービスの設計を進めました。

鈴木「もちろん、これだけで情報収集が万全になるとは思っていません。オンライン上でも一部の企業に応募が集中する可能性もあるため、学生の興味関心の幅を拡げるべく、多様な検索導線を設けたり、(前述したような)学生によるインターンシップの評価を掲出したり、学生がさまざまな軸で企業選びができるよう改善を積み重ねています。就活に充てられる有限な時間をいかに効率化できるかは、私たちがかねてよりずっと取り組んできていた領域。だからこそFaceMovieが担う役割は決して小さくないと考えています」

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人生の大きな選択だからこそ“納得感”にこだわりたい

就職活動にかかる時間や工数を減らし、深い相互理解のための時間を作ることを目指して2019年から開発を進めてきたFaceMovie。新型コロナウイルスの感染拡大と重なるタイミングでのサービス開始となりました。

鈴木「実際に利用した学生からは『説明会などが延期や中止になり困っていたが、リアルの場と遜色ない形で話を聞くことができて助かった』といった声をいただけています。

また、企業からも『オンラインに切り替えたことで、これまでアプローチできなかった遠隔地の学生と接点を持てるようになった』と反響も得られています。とはいえ、利用いただいているのは、リクナビ利用企業のうち数%程度。今後はオンライン説明会もスタンダードになるよう尽力したいです」

鈴木が学生目線にこだわるのは、決して会社の方針によるところだけではありません。リクルートに入社後、13年間にわたってHRビジネスに携わってきた鈴木もまた、“就活に苦戦した一人“だったからです。

鈴木「実は、リクルートに入るつもりはなかったんです。もともと広告業界に行きたくて就活をしていたんですが、ことごとく落ちてしまって。周囲の友人が次々と内定をもらうなか、私は大学4年生の12月くらいまで就活を続けていたんです。今思えば、『なんとなくクリエイティブでかっこいい人が多そう』といったミーハーな動機で選んでいたので受かりっこないんですよ(笑)。でも、当時の私はそんなことも分かっていなかったんです」

もっと早くから情報収集をして、自分のイメージに凝り固まらず、早い時期から世の中のさまざまな企業に触れることができていたら、あのつらい時間を過ごさなくてもよかったのではないか。この時の原体験が、納得感の高い就活ができる環境作りを目指すモチベーションになっているのです。

鈴木「その後、私は運良くリクルートと出会い、熱をもって取り組める採用支援という領域に出会うことができました。でも、他社に就職した学生時代の同期が、入社後のミスマッチに苦しむ姿も目の当たりにしました。

就活は、単なる『職場・職種のマッチング』ではありません。その後の人生を大きく変える選択だと思います。だからこそ私は自分の仕事を通して、満足度の高い『就活』を超えた、より納得度の高い『人生』をつくっていくお手伝いができたらと思っているんです」

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新型コロナウイルスの影響で、就活の現場でも急激なデジタル化が進んでいます。「働くこと」そのものも多様化し、フリーランスや起業といった選択肢を持つ学生が増えるなど、そのあり方自体も変化しています。今、社会に出ようとする学生に本当に役に立つもの、提供すべきものはなにか。そして、一人ひとりの「納得できる選択」を少しでも後押ししたい。決して簡単なことではありませんが、その想いを胸に、日々仕事に向き合っています。

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▲左:新卒メディア統括部・統括部長 大家純一/右:事業推進部マーケット創出グループ・鈴木敬直

※取材はコロナウイルス感染症対策のため、オンラインで実施しました。
※事業内容や所属などは取材時のものです。

■関連リンク
https://www.recruitcareer.co.jp/covid19_hataraku/new_graduates/

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