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生き生き働くためのセルフマネジメントのススメ(前編)

リクルートで働くその道のプロが「仕事探し」や「学び方」「美容」や「食」といった様々なテーマの最新トレンドについて語る番組『トレンドランナー』。第十三話のテーマは「働き方の最新トレンド」。リクルートワークス研究所 研究員をゲストに迎え、前編は「リモートワーク時代の働き術」について聞きました。

藤井:リクルートがお送りするポッドキャスト「トレンドランナー」。今回はリクルートワークス研究所の主任研究員 辰巳哲子さんをお迎えしています。よろしくお願いします。

辰巳:よろしくお願いします!

辰巳様-1

リクルートワークス研究所 辰巳哲子

藤井:まずは、辰巳さんが所属されているリクルートワークス研究所について教えていただけますか?

辰巳:リクルートワークス研究所は、「人と組織」を研究している研究所です。中でも、私は「個人のキャリア」や「学び」、「学校」の研究を担当しています。

リモートワーク時代の働き術

藤井:辰巳さんに今回伺うテーマは「リモートワーク時代の働き術」です。リクルートワークス研究所では「生き生き働く」を科学するレポートを発表されたんですよね。

辰巳:はい。もともとリクルートワークス研究所のビジョンは、「生き生きと働く次世代社会の創造」なのですが、そもそも「生き生きと働く」ということって何だろう?というのを研究的に考え始めたのがきっかけでした。

藤井:「科学」というのがすごいキーワードで、「生き生きと働く」という概念を、再現性を意識して、構造的に捉えてみようというレポートなんですね。

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リクルート 藤井薫

辰巳:そうなんです。これまで日本人の仕事のやりがいについては、内閣府が1978~2008年までずっと「仕事のやりがい」を調べ続けてきていたんですが、日本人の仕事のやりがいのピークはバブル前の1981年で、以降はずっと下がり続けていました。

藤井:なんと、そうなんですね。ずっと下がり続けているとは…。

辰巳:その後、働き方改革があって労働時間は減ってきましたが、それでもまだ課題はありました。

実際アンケートを採ってみると「仕事が終わらないのに…」、「今この時期はむしろバリバリやって成長していく時期だと自分では思っているのに…」という声がありました。

本当は個人が自分の意志で仕事を管理したいのに、働き方改革では、押し付けられるような形で自分の働き方を変えていかなきゃいけないということに対する不満があることが見えてきたんです。

藤井:そんな中で、個人にスポットを当てたものを見なければ、というそんな感覚があったんでしょうか?

辰巳:そうですね。そこで、どうすれば個人が自分のやり方で生き生きと働くことができるんだろうか、ということについて研究を始めました。

まず、1,600人の方に「生き生き働いている時ってどういう時ですか?」というのを自由記述で書いてもらいました。

そうしたら…、「お客さんが実際に喜んでくださった時です」や「自分が想定した通りの結果が得られた時です」とか、「自分に任されているっていう感覚が持てた時です」「成長している時です」と様々で、中には「汗をかいている時」と答える人もいました。

人それぞれ「生き生き働く」があって、「生き生き働くって人によってこんなにも多様なんだ!」ということを私たちも気付かされるきっかけになりました。

藤井:1,600人なりのみんな違う「生き生き」のイメージがあったということなんですね。

「生き生き働く」の8つの要素

藤井:生き生き働くを実現するには「労働時間を短くすればいい」 というほど単純なものではないということですよね。1,600人の多様な声の中で、辰巳さんが分解したらいくつかの共通項というのが見えてきたのでしょうか?

辰巳:8つの要素の組み合わせであることがわかりました。組み合わせ方はひとそれぞれなのですが、8つの要素の組み合わせで、個人の中の「生き生き働く」というのが決まってきているというのが分かったんです。

★1枚ぺら

藤井:「生き生き働く」ための必要な8つの要素を一つひとつ教えていただけますか?

辰巳:1つ目が「活力実感」です。
自分がその仕事にすごく没頭していたり、熱意あふれる取り組みを通じて仕事から活力を得ている、という状態の時に、「活力実感」が高くなる傾向にあります。

2つ目が「強みの認知」です。「強みの認知」が高いほど、これまでの仕事を通じて得た経験や専門性を「自分の強み」として自覚をしている傾向があります。

藤井:自分の強みって、なかなか認知できてないかもしれないので、大事なポイントだったんですね。そして3つ目が?

辰巳:3つ目が「職務満足」です。
責任ある仕事への取り組みを通じて、周囲からの信頼や会社への誇りを感じている状態だと、「職務満足」が高くなります。

藤井:周囲との関係性が希薄になりがちなリモートワークだと、自分のやっている取り組みへの誇りが薄らいじゃう可能性があるかもしれないですよね。

辰巳:4つ目は「有意味感」です。
取り組んでいる仕事がどういう意味があるのかを理解していたり、自分にとっての価値や自分自身の成長を実感している時、「有意味感」が高くなります。

藤井:仕事をやってる時にも無意味感しかないとやるせなくなっちゃいますもんね。次、5つ目はどうでしょう?

辰巳:5つ目は「オーナーシップ」です。
仕事のプロセスを自分自身できちんと理解して、進め方を主体的に考えながら動かせるということです。自分で主体的に効率的に取り組むことができている場合には、「オーナーシップ」は高くなります。

藤井:リモートでも、まるで監視されているみたいに30分おきに「サボってない?」って報告義務がある会社だと「オーナーシップ」どころじゃないですよねぇ。次は6つ目ですね。

辰巳:6つ目は「居場所感」です。
「居場所感」が高い時は周囲のメンバーからの期待を理解して、職場の一員としての信頼や安心感、自分の役割を強く感じられています。

藤井:オフィスでは、挨拶があったり、仕事以外でも一緒にご飯食べたりして、「自分ってこの一員でいていいんだな…」っていう感じはありますが、リモートワークになれば「自分って本当に今どこにいるんだろう?」みたいな空虚感がありますね。まさに今大切になってくるような、「生き生き」の要素でもありますね。そして次が?

辰巳:7つ目は「持ち味の発揮」です。
先ほど、「強みの認知」がありましたが、強みとは別に持ち味が発揮できているかどうかということです。現在の仕事内容と自分がやってきた経験、強み、自分らしさが発揮できている場合に、「持ち味の発揮」が高くなる傾向にあります。

藤井:わかります。認知するだけじゃなく発揮できているか、ということですね。最後の8つ目は?

辰巳:8つ目が「多忙感」です。
「多忙感」と聞いた時に、ネガティブな印象を持たれる方もいるかもしれませんが、実は「生き生き働く」ということに対して「忙しいほうが生き生き働いているっていう実感持てる」という人と、「自分のペースで働けないくらい忙しいと、生き生き働けなくなっちゃう」という人と、両方いると思うんですよね。

「いつも全力で忙しく働いている」「いつも忙しくしていること」に対して充実感を感じるという方にとっては、「多忙感」はプラスの影響を持つ要素になっています。

藤井:「この3日間寝てないんだよね!」って嬉しそうに言う人、いますよね。外形的な時間じゃなくて、本人がその時間の過ごし方をどう捉えているかの問題でもあるということですよね。

辰巳:まさに、そうですね。

8つの要素は“グラデーション”

藤井:コロナ禍では「生き生き働く」8つの要素が常に揺らぐような危険がありそうですね。

辰巳:そうですね。
とはいえ、単純にこの8つの要素の「あり」「なし」ではないと思うんですよね。

例えば、「有意味感」を大事にしたいけど、「強みの認知」はなくていいというわけではなく「ややほしい」とか、「オーナーシップ」ももちろん「ややほしい」とか、「居場所感」については「ほしい」とかですね。人によって、まったくなくていい要素はないと思います。

リモートワークの中で「居場所感」をリアルに感じられなくても、オンラインで「繋がってさえいることが分かればいい」っていう方もいらっしゃるでしょう。

一方で「リアルに居場所感を得たいんだ。私にはこれがとても大事なんだ」という方もいると思うんですよね。そこが人によって違うのかなと思います。

藤井:なるほど。確かにそうかもしれませんね。

…ということで、今回は辰巳さんに「生き生き働く」ための8つの要素を教えていただきました。

次回は8つの要素を活かした「セルフマネジメント術」へお話を移っていきたいと思います。辰巳さん次回もよろしくお願いいたします。

辰巳:よろしくお願いいたします。

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