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より小ロット、より自由なものづくりで、職人さんと未来を作る——ヴァレイ

J-WAVE(81.3FM)の人気モーニングワイド「J-WAVE TOKYO MORNING RADIO」内で、様々な企業が取り組んでいる「働き方」から、これからの変化や未来を考える「RECRUIT THE WORK SHIFT」。1日のスタートに「新しい働き方」のヒントをシェアしています。

6月22日~6月25日の放送では、服づくりのネットワーク「MY HOME ATELIER」を展開する「合同会社ヴァレイ」の取り組みをご紹介しました。

MY HOME ATELIERは、結婚や出産、介護、廃業などさまざまな事情で働けなくなった職人さんたちに自宅を縫製工場として開業していただき、コレクションブランドのデザイナーの洋服を小ロットから作ってもらうという仕組み。東北から九州まで約70箇所で、有名ブランドの縫製を手掛けています。

日本の縫製業界では、生産が海外に移行したことや加工賃の引き下げなどによって、1990年ごろに比べて縫製工場の数は4分の1になっています。そのため、国内で流通する衣料品で、メイドインジャパンの商品は現在2%ほどに。

「もともと日本は『ものづくりの国』で、ミシン普及率は50%以上。いまではそれが普通ではなくなったのですが、技術を持っている人はたくさんいます。需要はあるのに、いろいろな事情で働けない人が多いんです。『技術はあるが技術以外がない』という人が働きやすい環境が今の時代に求められているのではないでしょうか」と語るのは、代表の谷英希さん。

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今までは「技術はないが時間があり通勤できる」人を、会社が採用してきました。しかし、条件が整っている人が限られる現在、「技術はあるが技術以外がない」という人が働きやすい環境こそ、必要な働き方かもしれません。

MY HOME ATELIERに登録するには、書類審査のあとサンプルを縫製するというテストがあります。その合格する倍率は8~10倍と、かなり「狭き門」となっています。ヴァレイが審査するポイントはどこなのでしょう?

「弊社では、技術だけでなく、コミュニケーション力やチームプレーを見て判断しています。アパレルは芸術作品ではなく、職人は言われたことを100点に近づけて縫製するのが大切なのです」と谷さん。

登録した方の中には、自宅で月30万近く稼ぐ人もいるとのこと。ライフスタイルにあわせて仕事ができるのが魅力のようです。

さて、母親が縫製工場を経営していたという谷さんは、高校から専門学校を経て俳優や演出の仕事を経験したあと、オーストラリアへ渡り、25歳で帰国。4年半ほど前にヴァレイを立ち上げ、この仕組みを運用し始めました。

現在、従業員は21名。経営の基盤が整ったと感じたのは今年に入ってからとのことですが、ここには2つのポイントがあったそうです。

ひとつは組織がしっかりできたこと。チームを分けてトラブルシューティングすることで、うまくオペレーションできるという確信ができました。

もうひとつは、職人さんたちがMY HOEM ATELIERというシステムを納得してくれたこと。最初は仲介業とみられていましたが、「ヴァレイが入ることで収入があがった」という実績ができたことが大きかったようです。やはり、使う人たちが良くなる仕組みでないと続かないということでしょうか。

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また、徹底的に「アナログ」と「コミュニケーション」に注力しているのも特徴。IT化が進む中、職人さんにとって難しいのがITです。「アナログの人にどうやってわかりやすくデジタルを使ってもらうか?」を常に考えているとのこと。ミシンで縫っているときにいちいちパソコンは開かないため、書類はなるべく「紙」で送るといった工夫をしています。

「コミュニケーションの観点でいえば、LINEで送ったものを見ていなければ電話で確認するなど、アナログなコミュニケーションがデジタルを活用するために必要」と語っていただきました。

ヴァレイは昨年、中小企業庁の「はばたく中小企業300」に選ばれました。そんな経緯もあり、コロナ禍の中で不足する「医療用ガウン」の生産を手掛けることになりました。日本全国をひとつの工場を考えると、MY HOME ATELIERなら職人さんたちが感染することなくガウンを作れるわけです。

日本中に数百名いる職人さんたちは、日ごろ高価なものを丁寧に縫っているため、ガウンはすぐにできます。しかし、検品など「技術を使わないが、人が必要な作業」をどうするかが課題でした。そんなとき、ANAホールディングがその部分を担うことになり、共同プロジェクトとなったといいます。

コロナ禍において、アパレル業界はどのように変わっていくのでしょうか?「今後、いままでどおりの生活に戻ることはないと思います。洋服もいままで以上に売れなくなるし、国産も減っていくかもしれない」という谷さん。アパレルと職人さんに特化した会社として、「職人の生活をどう変えるか?」を考えて、新しいアパレル生産のモデルを作っているところだそう。「これからは、より小ロットでより自由にものづくりができて、よりロスの少ないものづくりをしていかなければ!」と決意を語っていただきました。

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最終日は、ヴァレイが今後どのような働き方を目指しているのかを伺いました。谷さんによれば、「組織は適正な規模が決まっています。アパレルメーカーでは、ユニクロのような汎用的デザインのものは大きくなればなるほど良い。しかし、自分たちのような専門的、ファッショナブルなアイテムでは、適正な規模は2~3億円の売り上げだと思っています」とのこと。

ヴァレイでは、規模に合わせた数の職人さんを確保し、すぐに作れる体制を作っています。規模を適正化し、デザイナーと職人をマッチングしてひとつの会社を作るようなイメージで展開すると展望を語っていただきました。

ヴァレイでは、2018年から自社ブランド「KAZOKU(かぞく)」も展開しています。最後に、KAZOKUにどんな思いを込めているのかお伺いしました。

「いま、日本の生産の現場はアウトソーシングになっています。なので、下請けになればなるほど、本当に困ったときに仕事をもらえなかったりする。問題が起こったとき、心では心配するがお金は動かさないというのは無責任です。もし家族が勤めていたら手だてを打つはずです。だから、すべての関わりのある人を『家族』と考えようということなんです」

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今週のお話から導き出す「WORK SHIFTのヒント」は、『家族感覚でみんなにメリットを!』。

より小ロットでより自由によりロスの少ないものづくりを家族感覚で、という選択肢を。きめ細かい心遣いで、しっかりと未来を見据えています。

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